一時は引退も覚悟したベテランが、かつての本拠地でメモリアル勝利を飾った。18年目の巨人大竹寛投手(36)が6回2死満塁から登板し、宝刀シュートを主体にピンチを脱すると、1回1/3を無失点に抑えて通算100勝に到達した。鬼門マツダスタジアムでは開幕カードの3月31日以来の勝利で、敵地での連敗を5でストップ。2位DeNAに3ゲーム差、3位広島には4・5ゲーム差をつけ、再び首位固めに入った。

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100勝の記念ボードを手に、大竹は笑顔で無数のフラッシュと歓声を浴びた。ボードを手にインタビューを受け「18年目でやっと勝てた。こみ上げてくるものがありますし、感慨深いです」とかみしめた。

宝刀で攻めた。2点リードの6回2死満塁でマウンドへ。4球連続シュートで会沢の懐を攻め、スライダーで二ゴロに抑えた。7回は2三振を含む3者凡退。この日救援陣で最長の1回1/3を投げ、大台に達した。通算100勝99敗。「こんな(勝敗が)トントンのピッチャーいないんじゃないですか。胸張って、100勝したと言うのは恥ずかしいくらい」と照れた。

一時は引退を覚悟した。4月上旬の2軍戦、先発予定の試合前のウオーミングアップ中に足を負傷。登板を回避し、約1カ月間、戦列を離れた。「まさかアップでケガをするとは…。本当にショックだった。迷惑をかけたし、何かのお告げなのかなと思った」。

心が折れかけた時、高校時代のベースボールTシャツに描かれた言葉が頭によぎった。山本五十六の「男の修行」だった。「苦しいこともあるだろう」で始まる格言の最後は「これらをじっとこらえてゆくのが男の修行である」で締められる。「悔いなく、やりきる」と決めた。

5月上旬、復帰登板は午前9時開始の3軍戦だった。早朝4時半に起床し、球場入り。クラブチーム相手に2回を無失点に抑えた。「朝9時の試合は久しぶりで、原点に返れたというか、高校の時を思い出した。ここからはい上がっていく」と誓った。だから今、「1軍で投げられるのが幸せ」と全身で表現する。

「ポリバレント・クローザー」の中川がコンディション不良でベンチを外れる中、ピンチを救った。試合の潮目を引き寄せ、敵地マツダスタジアムでの連敗も5で止めた。「目の前の試合を勝つだけです」。ジッとこらえた男に、光が差し込んだ。【久保賢吾】

◆巨人宮本投手総合コーチ(大竹の100勝目に)「今日は寛ちゃんに勝たせていただきました。寛ちゃんデーです」