劇的弾で優勝マジック20をともした。巨人石川慎吾外野手(26)がプロ初のサヨナラ本塁打となる3号2ランで試合を決めた。

延長11回無死二塁、カウント2ボールから投手田口の代打で登場。フルカウントからDeNAエスコバーの154キロを右中間席へ運び、チームの連敗を2で止めた。サヨナラ勝ちでの優勝マジック点灯は36年ぶり。原監督の期待に応えたラッキーボーイの一振りで、5年ぶりのリーグ優勝へまい進する。

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バットを放り投げた。右拳を何度も突き上げた。延長11回無死二塁。石川がフルカウントからDeNAエスコバーの真ん中154キロをたたいた。「外野が前にいたので越えるとは思った」とサヨナラ勝ちを確信し、飛び跳ねた。ぐんぐん伸びた打球は、右中間最前列へ届いた。「入るとは…。本当に奇跡です」。本塁の歓喜の輪に「よっしゃー!」と叫びながら飛び込んだ。ウオーターシャワーでびしょびしょになりながら、原監督と抱き合った。

指揮官の視線に燃えた。無死一塁で投手田口が打席に入り、一走重信が二盗に成功。ベンチ裏で待機していると原監督と目が合った。「これはひょっとしたらなと」。肩を組まれ「思い切って打ちに行け。右に強く打ちに行け」と耳打ちされた。次打者の坂本勇からは「3球振って帰ってこい!」と背中を押された。2ボールからの初球、ストライクを見逃し「勇人さんの顔が見られなかったです…」。それでも頭を整理し、ファウルを挟んで2スイング目で仕留めた。

苦境にも、へこたれなかった。昨秋キャンプでは就任直後の原監督から「スター性もある」と期待を込められ、野手キャプテンに任命された。だが、開幕1軍入りも、代打でのチャンスをつかみきれず、5月中旬から約2カ月、2軍暮らしが続いた。それでも昨季引退したベテランの姿が脳裏を巡り、気持ちをつないだ。「去年脇谷さんの姿をすごく見てきた。やるべきことを真剣に取り組むところを、後輩たちも見ていると思った」。16時開始の2軍戦前も早出で打撃練習を行うなど、牙を研いできた。

休日は漫画「ワンピース」を読み込むインドア派のイケメンが、ヒーローになった。原監督も「非常にきっぷのいい選手。彼らしさが出てよかった」とたたえた。優勝マジック20が点灯。お立ち台で目を赤らめたことを質問されても「見間違いですよ」と“否定”。喜びの涙は頂点に立った時までとっておく。【桑原幹久】