矢野監督、日本一お待ちしています! ラグビーW杯アンバサダーで元日本代表の元木由記雄氏(48=京産大ヘッドコーチ)が、親交のある阪神矢野燿大監督(50)にCS突破への熱いエールを送った。快進撃の日本代表と奇跡のAクラス入りを果たした矢野阪神の共通点を紹介。日本中に感動を与える存在として、同日決戦となる5日のCS初戦&サモア戦の勝利を期待した。【取材・構成=真柴健】

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4大会連続でラグビーW杯を経験した男が、力強くペンを握った。「日本一 待ってます」。矢野阪神への熱いエールだった。シーズン最終盤に6連勝で奇跡のCS進出を果たした。日本一を目指し、5日からDeNAとのファーストステージに挑む。元木氏は言った。

「流れは大切。W杯は決勝にベストを持ってこれるチームが1番強い。大会前まで調子がよくても本番で崩れる例はたくさんある。そういう意味では、今の阪神はすごいチャンス。難しい局面を打破した。波に乗っていける」

2人は親交が深い。その上で今、現役時代にラグビーと野球界でそれぞれ頂点を極めた者同士が激しく共鳴している。矢野監督は9月30日の最終戦セレモニーで、日本代表が強豪アイルランドを撃破したことに触れた。元木氏は深く感謝した。「本当にうれしい。野球やサッカーに比べると、日本でラグビーはマイナースポーツになる。野球界、阪神の監督がラグビーを発信してくれた。ラグビー界にとって、ものすごくプラスになる」。阪神もまた勝つことで日本中に感動を与える存在だ。「CSで勝てば、本当に喜んだり、やる気や元気が出る人も多いと思う」。

阪神は昨年の最下位から3位に躍進。矢野監督が重んじる自主性に選手が応えた。元木氏は奮闘する日本代表との共通点を見た。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチの指導と重ね合わせた。「ジョセフは『グラウンドの選手が自分たちで考えないと』と思っている。状況が変わる中で指示待ちになるとうまくいかない。似てるよ、阪神は今のJAPANに。(CSの)可能性が低いところから連勝でゴールした。今、選手たちに充実感や、やりがいがあると思う」。

5日にCSが開幕。ラグビーW杯も同日にサモア戦が行われる。元木氏は言う。「試合は答えを出す場所。そこにたどり着くまでに、どういう準備をしていけるか。技術面は、すぐには向上できない。短期決戦は自分たちを信じて、集中力を高く保ったチームが勝つ」。魂のこもった金言を、決戦目前の虎に届けた。

◆矢野監督とラグビー日本代表 CS進出を決めた9月30日中日戦(甲子園)終了後、矢野監督はグラウンドで観客にあいさつ。「日本では、ラグビーワールドカップで、日本チームが、日本中に大きな感動を与えてくれています。僕たち阪神タイガースも、ファンの皆さんにこれから感動と、そして子供たちに夢を与えられるような、そういうチームになっていきます」と力強く話した。

2日にスピーチの理由を明かした。「オーバーに言えば、バトンが俺に来たんちゃうかなと。スポーツ界みんなで、日本を元気にしようぜって。子供らに夢を与えようぜ。俺らはラグビーやで、俺らはバレーやで、俺らは野球やでって。つまりスポーツ界のつながりを、俺が勝手に想像したんのよ。リーチ・マイケルから俺がバトンを何となくもらった気がしたから」。ラグビー好きを公言する指揮官は、将来のラグビー界を背負って戦うサムライたちの姿に大きな刺激を受けた。

◆元木由記雄(もとき・ゆきお)1971年(昭46)8月27日、東大阪市生まれ。大阪工大高(現常翔学園)で全国制覇。明大で3度の大学選手権優勝。19歳で日本代表入り。日本代表79キャップ。91年W杯から4大会連続で日本代表に選出された。94年に神戸製鋼入りし7連覇を達成。10年に引退。2019W杯アンバサダー。現在は京産大ラグビー部ヘッドコーチを務める。