阪神藤浪晋太郎投手(25)が「嗅覚」異常を訴え、新型コロナウイルス感染を調べるPCR検査で陽性反応が出たことが26日、分かった。日本プロ野球機構(NPB)の選手の感染は初めて。3月14日に藤浪と食事をともにした2選手も「味覚障がい」に類似した症状を申し出ているという。球団は最低1週間の活動休止を決定し、チームは事実上の解散状態。矢野監督や選手らは自宅待機を命じられ、目指す4月24日開幕にも大きな影響が出そうな非常事態に陥った。

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好天で暖かい球場のムードが凍りついた。この日は1軍が全休。鳴尾浜では2軍ナインがソフトバンク戦に備えて午前9時から体を動かしていた。野手はフリー打撃を行い、投手はブルペン投球。日常の光景は午前10時過ぎ、ナインの1人がPCR検査を受けると公表されて一変した。試合中止が決まり、選手は普段より30分ほど早く練習を打ち切って虎風荘へ。緊急ミーティングで状況の説明と自宅待機を通達され、続々と帰宅した。

当初は試合を行う予定だったが、朝になって味覚障害を申し出る選手が複数現れた。これを受け、急きょソフトバンクに中止を申し入れたことに、谷本球団副社長は「練習に入ったので申し訳なかったけど、いかんともしがたい」と話した。正午に球団がPCR検査を受ける選手が藤浪と発表。球団広報が鳴尾浜で対応に追われた。

「(藤浪は)コロナウイルスでよく言われている風邪症状はまったくない。陰性の可能性は十分あると思う」。そう話す一方「PCR検査はすぐに受けられるものではない。受けられる病院等々を確認している状況」と説明。藤浪は自宅待機し、保健所の指示でPCR検査を受診する流れだが、見通しは不透明という。

集団感染の防止へ、前代未聞の1日になった。本拠地甲子園では昼前から白い防護服姿の作業員が消毒作業を開始。球団事務所をはじめ、午後3時には2軍拠点の鳴尾浜の球団施設も入念に消毒が施された。同副社長は「藤浪君と味覚症状を訴えてきた選手が立ち寄ったようなところ」と話すなど、物々しい雰囲気が漂った。

選手に感染予防を注意喚起してきた球団にとって想定外の事態だった。NPBとJリーグが構成する新型コロナウイルス対策連絡会議に出席してきた同副社長は「(藤浪は)おかしなことに嗅覚だけないと…。専門家の先生方を入れた対策、連絡会議でも、そういう症状を言われていなかった。それはノーチェック。逆に言うと、我々から申し出なさいという規定に入っていない」と困惑を隠せない。日本中が感染拡大防止策を講じるなか、4月24日開幕を目指すプロ野球界にも激震が走った。