プロ野球が来る開幕へ、新型コロナウイルスによる課題の山を乗り越えていく。11日、日本野球機構(NPB)は12球団代表者会議を開催。今後の感染状況を継続して注視する必要があり、開幕日の確定は先送りとしたが、6月中旬から下旬での開幕を目指すことで一致した。最短では6月19日となる。また7月19、20日の球宴も史上初の中止を決定した。次回の22日の代表者会議で開幕日決定を目指すが、緊急事態宣言の解除、ガイドライン作成、移動リスクを低減させるための日程作りなど、クリアすべき問題は多い。
◇ ◇ ◇
球音の訪れは確実に近づいている。NPB斉藤惇コミッショナーは「何度も開幕の日付が決まらないことは残念に思う。選手の方々にも心苦しい」と話した上で「今月末までの感染状況を見ながら開催準備をして整うことを条件に、来月の半ばから下旬のどこかで開幕できることを目指そうということは12球団で一致した」と表明。6月19日が最短開幕となるが、新型コロナウイルスとの闘いに予断は許されない。
この日、正式決定したのは球宴の中止。今年で70年目を迎える夢の祭典が初めて消える。「(球宴までの)時間感覚から考えてもどうやって選手を選ぶか難しい問題もある」。交流戦中止を決めた際に最大125試合を目標とし、球宴中止で日程確保に努めるが「だんだん時間も厳しくなっているし、ある程度試合数は減ると思っている」とさらなる減少も示唆した。
課題は山積みだ。開幕へ、緊急事態宣言の解除は大前提。14日に政府が一部地域の解除を検討する中で、ヤクルトなど複数球団が今月中旬からの全体練習を再開させる構えだ。一方で再開に慎重な球団も。6月初旬に対外試合の開始をもくろむが、再始動の一定の足並みをそろえる必要もある。
専門家からは移動リスクの指摘も受けている。12球団ではアイデア段階としながらも関東圏、関西圏に分けるなどシーズンでの集中開催案も挙がっているという。それでも地方都市の球団は遠征が長期化し、公平性は保てない。「意見には賛成もあるし、反対もある。それが現状です」。同一カードの6連戦というプランもあるが、いずれも日程の修正は必至だ。
開幕しても選手は感染リスクを抱え、感染者が出た場合の基準づくりも必要だ。既に開幕している韓国、台湾はガイドラインを作り、感染者が出た場合の対応も決めている。「(日本も)盛り込むつもりです。台湾、韓国のケースも参考にさせていただく。台湾は中止、韓国はいったん停止するが時間をおいて再開、というようなことが書いている」と有事に備え、日本版ガイドラインを作成中だ。
14、21日の政府の専門家会議を受けて情勢を見極め、22日の12球団代表者会議で開幕日を決めることが理想となる。ウイルスが小康状態となり、各自治体の協力、何より世論の後押しも重要だ。今できる最善を尽くし、天命を待つ。【広重竜太郎】
▽西武飯田球団本部長 移動のリスクを少なくするという観点から集中開催というのは、開幕する上での考え方の1つだと思うが、今後協議していく中で決めていきたいです。
▽オリックス森川球団本部長 具体的な日程が出たので、そこに向けての準備が一層具体的に進められる。(今後について)明日12日に(西村)監督、(福良)GMらと打ち合わせをして決めていく格好になる。
▽広島鈴木球団本部長 イメージ的には5月末までに紅白戦ができるまで持っていきたい。情勢を待ってスタートするわけにはいかない。ある程度、今の状況を見ながら少しずつスタートを切っていこうかというところ。すぐにどうこうはない。もしだめなら(12球団としての目標も)下げざるを得ない。
<新型コロナウイルスを巡る経過>
◆2月21日 日本野球機構(NPB)と12球団が感染防止のため共通の対策実施を確認。
◆26日 臨時の12球団代表者会議でオープン戦の残り全72試合を無観客で実施すると決定。
◆3月3日 Jリーグと連携し「新型コロナウイルス対策連絡会議」を設置、第1回会合を開いた。
◆9日 臨時の12球団代表者会議を行い、開幕延期を決定。
◆12日 開幕を4月10日以降とすると発表。
◆23日 4月24日の開幕を目指すことを決定。
◆4月3日 24日の開幕を再々延期すると決定。
◆17日 5月中の開幕を断念し、交流戦の中止を決定。
◆23日 開幕から当面の間は無観客試合とする方針を固める。
◆5月11日 6月後半に開幕を目指すことで一致。オールスターゲーム中止を決定。
◆オールスターゲーム 2リーグ分立翌年の1951年に始まったセ、パ両リーグの対抗戦。出場選手はファン投票、選手間投票、監督選抜、プラスワン投票で選ばれる。過去の対戦成績はパ85勝、セ79勝、11分け。ファームの選手によるフレッシュ(旧ジュニア)オールスターは63年から1軍オールスターの前座としてデーゲームで行われ、78年から1軍とは別日程の単独開催となった。