キングはあきらめん! 阪神大山悠輔内野手(25)が9回裏に劇的なサヨナラ本塁打を放った。10月13日中日戦以来となる27号ソロで、リーグトップの巨人岡本に2本差とした。チームの今季勝ち越しが決定。シーズンは残り4試合。球団では86年バース以来の本塁打王へ、大山の爆発に注目だ。

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まだあきらめない。大山が本塁打王に望みをつないだ。同点で迎えた9回1死。ヤクルト梅野の外角高め147キロ直球を強振した。「感触はすごく良かったんですけど、ちょっと打球が低かったのでどうかなと。入ってくれと思って走った」。願いを込めた打球は左中間席に着弾。27号ソロは自身2度目となるサヨナラアーチだ。ナインが待つ本塁では、ポンッと手をたたき、会心のガッツポーズ。祝福のウオーターシャワーを笑顔で味わった。

待望の1発だった。10月13日中日戦を最後に、不発が続いていた。一時はリーグトップの座にいたが、巨人岡本に再逆転を許していた。シーズン終盤での疲れや目に見えない力みもある中で「ホームランを狙って(フォームを)崩すのが一番いやだったので。常に自分のスイングをとは思ってました」。タイトル争いで注目されても、自らのスタイルを貫いた。実に19試合、85打席ぶりの放物線。これで巨人丸に並ぶ2位タイ。トップの岡本まで2本差とした。

シーズンは残り4試合だが、大山はキング獲得の可能性を秘めている。打ち出したら止まらないのが大山の特長だ。今季は3戦連続アーチが1度、2戦連続が4度もある。1試合2発も2度ある。久しぶりの1発がアーチ量産のきっかけになる。

チームは接戦を制し、11月初白星で貯金5。2年連続のシーズン勝ち越しを決めた。矢野監督は4番の一打に「タイトル争いもあるし場面がね。試合を決める一打に、価値があって意味がある。この広い甲子園でホームラン王争いをしているというプライドも持ち合わせていると思うし、いろんな価値がある」と評価した。

大山がこだわる勝利打点は、15度目でリーグトップとなった。「何よりチームに勝ちが付いたの一番うれしい」。お立ち台では寒空で歓声を送ってくれたファンに「チームの勝利のために一生懸命やっていれば、自分の成績もしっかりついてくると思っている。そこに向かって、しっかり頑張りたいと思います」と力強く誓った。86年バース以来の快挙へ。全打席“全集中の呼吸”でバットを構える。【奥田隼人】

▼阪神のサヨナラ本塁打は、9月1日ヤクルト戦のサンズ以来、今季2度目。大山のサヨナラ本塁打は、19年8月10日の京セラドーム大阪での広島戦以来、2度目。甲子園では初となった。

▼阪神が11月の1軍公式戦で勝利を収めたのは、50年11月12日の西日本(後に西鉄と合併)戦に4-2で勝って以来、70年ぶり。