巨人菅野智之投手(31)の無双投球の根拠が帯状に浮かび上がった。開幕投手決定後初先発した4日のヤクルト戦(東京ドーム)で、従来よりカーブの割合を増やした新たな投球術を披露。同じ本格派右腕の楽天田中将大、日本ハム上沢直之、西武高橋光成、オリックス山本由伸の各投手の「球速帯」とも比較し、開幕前の試運転ながら、スピード差「24キロ」を操った菅野の新スタイルを「深掘り。」する。
◆菅野はオープン戦初登板となった4日ヤクルト戦で、3回2安打無失点と危なげなく開幕への調整登板を踏んだ。打者10人に対し、全47球。最速149キロ~最遅125キロまでの「球速帯」を隙間なく埋めた。
【最速149キロ~140キロ付近】までに、直球とツーシーム。ここまで勝負球として多投してきた【145キロ~140キロ付近】にカットボール、【139キロ~130キロ付近】にスライダー、フォーク。今季改良した【127キロから最遅125キロ】のカーブで帯を延ばした。
軸球に加えたカーブについて「その球速帯の球種がずっとなかったので、すごく効果的だと思う。欲を言えば、もう少し遅い、122キロから123キロぐらいがいいかなと」と説明した。
ここまでもカーブを持ち球として投げてきたが、投球頻度と位置づけが明らかに異なる。100球のうち5球程度だった頻度は、今回のヤクルト戦では47球中6球まで増加。さらに2回の浜田、3回の太田からの2奪三振は、いずれも決め球として選択した。理想とする球速については「勝負球だと指にもかけるし、腕も強く振るので。まあこれぐらいかなというのもある」とも話した。
多彩な変化球を器用に操るが、変化球一辺倒は性に合わない。最強の変化球はいつの時代も「一番速い球が、一番打ちづらい」と、速球を挙げる。開幕後150キロを超えてくる速球は、最速149キロにとどまったが、本来のスピードになればさらに「球速帯」は広がる。「真っすぐで空振りは取れなかったんですが、ファウルを打たせることはできた」と手応えを示した。
この試合でさらに注視すべきは、飛球が3回の中村の右飛のみで、ゴロ打球に終始した点。「しっかりとリスクマネジメントができた」と長打回避を想定した。最速球から減速していく中で、それぞれの球種をバランス良く配置。縦、横、奥行きの3次元をフルに網羅する投球が、菅野の無双につながっている。【為田聡史】
◆楽天田中将も巨人菅野同様、球速帯を広範囲に埋める。特筆すべきは宝刀スプリット。登板2戦目の2月27日ヤクルト戦では133~142キロの幅が出た。直球の軌道からワンバウンド気味で空振りを狙う、ストライクゾーン真ん中低めでタイミングをずらし、空振り、ゴロを狙うなど、ブルペンから試行錯誤を重ねる。ここ2戦では最速149キロの直球、130キロ後半~140キロ台のツーシーム、130キロ台中盤のスライダー、120キロ台中盤~後半のカーブを試投。未解禁でツーシームに似た球速帯のカットボールを含めば、さらに幅は広がる。
◆3日西武とのオープン戦(札幌ドーム)に先発した日本ハム上沢は、全75球の約7割が140キロ台だったが、その球速帯に5球種が存在した。142キロには直球、カットボール、シュート、フォークボールが集中。高レベルで投げ分け、打者を幻惑する。新球シンカーは抜けが甘く未完成。どの球速帯に落ち着かせ開幕投手のマウンドに立つか、注目だ。直球の最速が148キロで、最遅は107キロのカーブ。球速差は約40キロと幅がある。120キロ台が中心のスライダーやチェンジアップに、昨季までは130キロ台後半のフォークも。引き出しは今季も多い。
◆西武高橋は4日の日本ハム戦でカーブの割合を増やし、最大30キロの球速差で投球の幅を広げた。昨季、対西武打率4割を誇る2番近藤には第1打席の初球から3球連続カーブで右飛。第2打席でも121キロから入った。結果は四球だったが痛手にはならなかった。3番西川、4番中田と上位打線3人に対しても多めに投げ、いずれも無安打。「僕の変化球は速いのが多い。1個タイミングを外すカーブが制球できたことで、すごいいい形になった」。150キロ近い直球に、140キロ前後のフォークとカットが主体の右腕に、新たなアクセントとなる遅球が加わった。
◆オリックス山本由伸投手は5日のDeNA戦で今季初めてオープン戦に登板し、5回3失点。最大33キロという大きな緩急差を使い、常に主導権を持って投球した。130キロ台がほぼ皆無という極端さで、球速にメリハリをつけた。140キロ台中盤のフォークボールと150キロ前後のカットボールが特にやっかい。3回、牧を見逃し三振に仕留めた148キロのカットボールが象徴的で、ピンポイントの外角低めに全く反応できなかった。