首位は譲らん! 阪神が両リーグ最速で50勝に到達した。近本光司外野手(26)が初回に通算7本目となる先頭打者アーチを放ち、これが決勝打となった。デーゲームで2位巨人が勝ち、首位陥落の可能性もあったが、先行逃げ切りで後半戦開幕カードを勝ち越した。宿敵の追い上げも望むところだ!

   ◇   ◇   ◇

近本の予感が的中した。初回。大道の147キロ直球をバットの先で捉えた。打球を追った虎党が一瞬、静まり返る。右翼席への着弾を確認すると大きな拍手が、背番号5に降り注がれた。

「なんか今日は『打てそうな気がするなあ』と思っていたんで、振り切ってよかったなと思います」

7号ソロは今季3本目、通算7本目の先頭弾。「試合の流れとか勝敗を決める一番大事な仕事」とこだわる第1打席で最高の仕事を果たした。3回先頭では中前打で出塁。サンズの適時打で2点目のホームを踏み、リーグトップタイの58得点。リードオフマンの仕事を詰め込んだ2打席だった。

7月20日。午前9時30分。球宴を終えチーム練習に合流した初日。近本はまだ誰もいない甲子園の外野芝生でダッシュを繰り返した。プロ3年目。先頭に立ってチームを引っ張る気概がにじみ出る。エキシビションマッチは打率1割台にとどまったが「試したことの成果が得られなかったので、それは来年、2年後くらいに変えていけたら」。後半戦へ向け、心技体を整えた。

そんな選手会長近本が率いるチームは、シーズンが進むにつれて一体感を増している。この日の試合前には、13日に新人最多122個目の三振を喫したルーキー佐藤輝が“表彰”を受けた。坂本が「賞状 三振数優勝 佐藤輝明殿」と書かれた手作りの賞状を授与。ベンチ内は笑いに包まれ、ルーキーは「みんな、どんどん振っていきましょう!」と力強く言い放った。レギュラーも控えもルーキーも関係ない。勝利のためにそれぞれが動く。

後半戦開幕カードは2勝1敗の勝ち越し発進で、両リーグ50勝一番乗り。2日続けて巨人がデーゲーム中日戦に勝利。負けていれば首位陥落の危機をまたも回避した。「頭を負けて、2戦目いい形で勝てて。今日で流れが止まると嫌なところですけど、続けられた。いい形で火曜日からやれる」。矢野監督は早くも敵地での6連戦をにらんだ。近本も続ける。「後ろのチームを見るなというのは多分難しい。そういうところにベクトルを向けずに1日、1試合を勝ちきるだけ」。その積み重ねが、16年ぶりのリーグ制覇へつながっていく。【中野椋】

▼近本が今季3度目の初回先頭打者本塁打を放ち、通算では7本とした。阪神では単独6位に浮上。和田、マートン、鳥谷といった名打者たちを追い抜いた。近本はまだプロ3年目。今季はこれまでチーム全87試合で先発1番での出場を続けており、さらなる上位進出が十分に期待できる。