全ては16年ぶりのリーグ制覇のため。怪物ルーキーだからといって、特別扱いはしない。阪神佐藤輝明内野手は早期1軍復帰せず、しばらく2軍で刃を研ぐことになった。

10日に出場選手登録を抹消され、最短で20日から再登録できるが、井上ヘッドは「それはない。テルよりも成績を残している選手に失礼」と否定した。

自己ワーストの35打席連続無安打の末、下された決断だ。リフレッシュが目的ではない。2軍降格後、ウエスタン・リーグ2試合で8打数1安打。11日の同広島戦(甲子園)で左中間フェンス直撃の二塁打を放ったのみで、140キロ台前半の直球に詰まらされるシーンもあった。1軍でチーム最多の23本塁打の打棒を、自身も周囲も納得する形で取り戻さなければ、同じ轍(てつ)を踏むだけだ。

井上ヘッドは「もちろん将来的に1軍でスターになってもらわないと困る」と言った上で、復帰までの道程を見通した。「壁にぶつかった時に、アマチュアだった頃を思い出したり。2軍で年上の選手たちが頑張っている姿、年下の選手が見つめる視線を感じながら、『やっぱり俺も甲子園の大歓声の下でやりたいわ』という気持ちを持ってもらって。体にキレ、そして、やっと帰ってきたね、という頼もしいものを持って帰ってきてくれたら」。

さらに佐藤輝を欠く打線について、シーズン最終盤の青写真も描いた。「今はコロコロコロコロ変わってしまっているけど、前半戦から打順をほぼほぼ固定してきたところに最後は着地したい」。3番マルテ、4番大山、5番サンズ、そして「6番右翼」には…。開幕ダッシュを導いた重厚な打線に、背番号8は欠かせない。

2軍は14日からソフトバンク3連戦(甲子園)、17日からは中日3連戦(ナゴヤ)が控える。2軍の投手相手に求められるのは、豪快な本塁打量産に他ならない。ゲームだけでなく、特守や特打などで体をいじめ抜き、がむしゃらに状態アップを目指す。真のVの使者となるため、結果も内容も追い求める日々が続く。【中野椋】