阪神大山悠輔内野手(26)が虎メダルをかけられ、少しだけ表情を緩める。矢野監督が、井上ヘッドコーチが両手でグーとチョキを使って「20」を作り、主将を出迎える。36年ぶりに「20本塁打カルテット」が誕生した直後、痛恨の結末を予想できた観客がどれだけいただろうか。

3回だった。3番マルテの先制二塁打が飛び出した直後の2死二塁、1ボール1ストライク。4番大山は右腕ロメロの甘く入ったカットボールを逃さなかった。強振から大きなフォロースローを決め、左翼席に20号2ラン。「甘く来たボールを一発で仕留めることができました。(伊藤)将司が頑張って投げてくれているので、援護することができて良かった」。試合中に届けられたコメントからも充実感がにじみ出た。

球団では04~09年の金本知憲以来となる2年連続20本塁打以上。今季はすでにドラフト1位佐藤輝、サンズ、マルテが20発をクリアしており、85年のランディ・バース、掛布雅之、岡田彰布、真弓明信以来の「20本塁打カルテット」完成となった。ただ、チームは8回裏に1点リードを逆転されて痛い敗戦。個人的な数字を喜べるはずがない。

6回にはロメロの150キロツーシームを左脇腹に受け、苦悶(くもん)の表情を浮かべたままベンチへ。それでも再びグラウンドに戻り、フル出場で周囲を安心させた。矢野監督は患部の状態について「うん、大丈夫」と表現。「チームの勝ちのためにも1本でもどんどん積み上げていってくれたら」と4番主将に期待をかけた。8日からは2ゲーム差で追う首位ヤクルトと敵地3連戦。底力を最大限に発揮する時が来た。【佐井陽介】