ドラフト指名を待つ選手たちは、その日をどのように過ごすのだろうか。

04年ドラフトで巨人から7巡目で指名された鉾田一(茨城)東野峻(現DeNA球団職員)は、地元のドラッグストアでアルバイト中、校長先生から電話で学校に呼び出された。

「僕、何かやったのかな? って考えたんですけど、身に覚えはないし、何もやってないよなって思いながら、学校に急いだのを覚えています」

校長先生の「巨人」という言葉は聞き取れたが、アルバイト先への突然の電話に動揺。バイトのシフトを入れるくらいだから、ドラフト当日であることも頭に一切なかった。今ほどはインターネットや携帯電話が普及しておらず、学校到着後に指名を知って、仰天した。

「ウソでしょと。雑誌とかにはたまに載せてもらってましたけど、まさか、僕が指名されるなんて思ってなかったので」

卒業後の進路は、東京6大学リーグにも所属する大学へ進学する意思を固め、夏の大会以降は勉学に励んだ。鉾田一に進んだのも、文武両道の学校方針が理由の1つだった。本人さえも驚いた究極のサプライズ指名で、巨人からすれば「隠し玉」だったのだろう。

サプライズ指名から3年後の07年には、1軍デビューし、09年には開幕ローテを奪取。10年には自身初の2ケタの13勝をマークし、11年には開幕投手を務めた。13年にはオリックスにトレード移籍し、15年にはDeNAでプレー。そのシーズン限りで現役を引退し、現在はDeNAでアナリストを務める。【久保賢吾】