三島南高(静岡)の前田銀治外野手(3年)が、夢の扉を開いた。ドラフト会議開始から約1時間15分後、楽天3位で指名を受けた。同校の会議室で見守った中継画面を確認し、目を丸くした。驚きの表情は、みるみる笑顔に変わる。最後は、隣にいた稲木恵介監督(42)の胸に飛び込んだ。

直後の会見では、興奮気味に第一声を発した。「指名をしていただいた東北楽天ゴールデンイーグルスに感謝の気持ちでいっぱいです。とてもうれしくて、ホッとしています」。この日、登校前に同級生らと三嶋大社に祈願。同校では、64~65年に中日でプレーした山口春光以来2人目。65年のドラフト制度導入後では、初のプロ入りとなる。

消防士を目指していた「将来」が、約半年で変わった。3月のセンバツに21世紀枠で出場し、1回戦の鳥取城北戦で右翼フェンス直撃の三塁打を含む2安打を放った。試合には敗れたが、スカウトの評価は急上昇した。前田は「甲子園に出ていなければ、今日は無かったと思う」。ドラフト候補、そしてプロへ。シンデレラストーリーを一気に駆け上がった。

8月25日。祖母千鶴子さんが亡くなった。88歳だった。「ホームランを打つと、いつも喜んでくれた。本当はプロのユニホーム姿を見せたかったけど、きっと喜んでくれていると思う」。12日の四十九日を前に、何よりの報告を届けた。

チームメートらから胴上げで祝福され、歓喜の涙を流した。仲間への感謝も胸に、夢舞台に挑む。前田は「球界を代表するようなホームランバッターになりたい」と言った。シンデレラストーリーは続く。【前田和哉】