今季限りで現役引退を表明した巨人大竹寛投手(38)が、ラストマウンドで「シュートピッチャー」の生き様を示した。ヤクルトのサンタナに対し、5球連続でシュートを選択。カウント2-2から5球目でバットをへし折って、遊ゴロに抑えた。

広島から巨人へFA移籍1年目の14年、惜しげもなく、巨人の若手にシュートの「極意」を伝授した。春季キャンプでは、当時、シュートの習得に取り組む小山雄輝(現巨人球団職員)にこう伝えた。

大竹 あまりコースギリギリを狙いすぎると、ピッチングが窮屈になって、自分を苦しめるよ。真ん中から曲げる意識で投げるくらいで、ちょうどいいんじゃないかな。

プロ4年目の25歳、1軍生き残りをかけ、結果を求めすぎるあまりに完璧を目指す後輩右腕に、的確な助言で新球習得を手助け。投球の幅を広げ、小山はその年、16試合(15先発)に登板し、キャリアハイの6勝をマークした。

当時も今も、大竹の「投球論」は若手にとって、貴重な財産となる。広島時代に右肩を痛めた経験から、同じ悩みを抱える後輩たちに寄り添う姿も何度見ただろうか。完治には手術が必要なほどの右膝痛を抱えながら、投げ込んだ魂の5球はジャイアンツ球場でリハビリを続ける若手にも勇気を与えた。【久保賢吾】

▽巨人原監督(大竹について)「寛ちゃんらしい、見事な全てシュート、伝家の宝刀だったしね。投げられる状況じゃなかったかもしれないけど全力で投げた姿は寛ちゃんらしいなというね、しかも陽でね。あのプレースタイルは私の記憶の中に非常に残る投手です」