オリックス山本由伸投手(23)がシーズン最終戦に登板し、今季4度目の完封勝ち。今シーズン18勝目を手にして、球団新の自身15連勝となった。

これで、最多勝、最高勝率、最優秀防御率、最多奪三振、最多完封の投手5冠が濃厚になった。

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寒空の仙台で山本は熱投を続けた。「とにかく必死。1試合の重要さを十分に理解したマウンドでした」。悲願Vへ負けられない最終戦。「高山投手コーチが『1人にさせないから』と言ってくれた」。紅林が、後藤が、バックが好守で助けてくれた。そのたび白い歯を浮かべ、グラブをたたいて感謝。8回を終え、同コーチから「決着をつけてこい」と声が掛かった。ベンチ、仲間とつかんだ今季4度目の完封。散発4安打で三塁を踏ませなかった。

高卒5年目で故障なく初のシーズン完走。13年に楽天田中将が24連勝した同じマウンドで、21年の山本は15連勝で18勝目とした。最多勝、最優秀防御率、最高勝率など投手5部門のタイトルを総なめに。磨き上げた直球と“握らないフォーク”が最大の武器だ。

初回先頭の山崎剛を146キロフォークで空を切らせ、初めて200奪三振に到達。空振りを奪うフォークは見よう見まねでものにした。投手を始めた宮崎・都城高1年のとき、紅白戦の左打席で“打者目線”で覚えた。「1歳上の先輩が『ツーシーム』と投げていたんです。でも落差がすごかった」。打席を離れると即座に教わって習得。探求心がエース道を切り開いた。

改良を重ねて、今では「カウントを取るのと三振を狙う2種類のフォーク」を操る。「(捕手の)サインは1つなんですけどね」。ボールは2本指で挟まず「握ってないんですよ」と縫い目に添えるだけ。そして1球1球に愛情を込める。球審から新しいボールを受け取ると、ふうっと息を吹き、両手でギュッとこねる。「触った感じがパサパサから、しっとりに変わるように」。この日も122球を優しくなで、味方にした。

これで首位奪回。貯金15でペナントレースを終えた。最短Vは27日で、2位ロッテの3試合を待つ。中嶋監督は「全然もう、負けてくれとか思えない。良い勝負をできたなと思う」と充実の表情。「その先もあります」とポストシーズンも見据えた。歓喜か、悲運か-。全員で喜ぶために、最善は尽くした。【真柴健】