これがレジェンド魂だ! 日米球界のレジェンド、イチロー氏(48=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が18日、ほっともっと神戸で女子高生と熱戦を演じた。

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友人らと結成した草野球チーム「KOBE CHIBEN」のエースとして、高校女子硬式野球選抜チームとのエキシビションマッチに出場。147球を投げ切り、完封勝利をマーク。途中、足がつる場面もあったが野球への情熱を見せた。

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高校生相手の試合、しかも女子野球。イチロー氏にとって未経験の世界だ。しかし試合となればスイッチが入る。笑顔はなし。本気で投げ込んだ。途中、右足がつる場面もあったが最後まで147球を投げ切った。天才ヒットマンとして3打数無安打だったが「永遠の野球少年」の表情を見せた。

「ボクも負けたくなかったし、緊張感があった。こんなのいつ以来だろう。WBC以来かな(笑い)。それぐらい負けられない緊張感を味わいました」

この日に向け、練習を重ねてきたが試合前から気にしていたのは神戸の気温だ。予想通り、ひと桁台まで冷え込んだが、マウンドに上がるといきなり134キロをマーク。最速135キロのストレートに「投手・イチロー」として投げるスライダー、ツーシームを駆使し、アウトを重ねた。

異変が起こったのは8回表。投球を終えた直後に「あっ」と叫んだ。それまで攻撃中にベンチで屈伸するなど気にしていた右足がつった。ここで交代するかと思われたが投球を再開した。終わってみればイチロー氏が「女子野球のオールスター」と評する打線を相手に4安打、17三振と気迫の完封勝利だ。

「足があんな風になったのは初めて。寒さが大きかったですね。力の入り方が普段とは違ったので…」。長い現役生活の中でもなかった初体験をそう説明したイチロー氏。「抜け球は気をつけないと」と試合前から心配していた死球も2つ出してしまった。その際は帽子を取り、深々とお辞儀する礼儀も見せた。

「アマの指導に興味がある」。一昨年の引退時に言っていた通り、高校生の指導に必要な「学生野球資格」を回復し、昨年12月に智弁和歌山を初指導。今年も国学院久我山、千葉明徳、高松商を訪れ高校生に直接指導をしてきたが女子高生との交流はこれが初めて。

「自分の限界が見られたのでアスリートとして有意義な1日でした」。足がつるアクシデントも出た異例の交流だったがどこまでも野球に打ち込む姿勢を若者に見せた。それこそイチロー氏のスタイル。現役引退した今もなお、それは不変であることをはっきりと示していた。【編集委員・高原寿夫】

◆イチローと投手 愛工大名電時代は甲子園に2度出場。2年夏は外野を守ったが、3年春はエースとして1回戦の松商学園戦に先発。相手エース上田佳範(元日本ハム、中日)と投げ合い、3失点完投も2-3で敗れた。プロ入り後は外野手として大ブレークしたが、96年の球宴第2戦で全パ仰木監督が、9回2死から打者松井(巨人)の場面でイチローをマウンドに上げた。全セ野村監督は代打に投手の高津を送り、結果は遊ゴロ。米大リーグでもマーリンズ在籍時の15年10月、フィリーズ戦で公式戦投手デビュー。1回を2安打1失点だった。打者としてメジャー通算3089安打を積み上げたが、投手としては1試合0勝0敗、防御率9・00だった。

「僕が日本で野球選手だったの知ってる?」イチロー氏の優しさに質問次々>