北京五輪でモーグル競技に大興奮した数日間。最後はスキー板がテレビ画面に映る度、メーカーのロゴを目で追っていた。
男子モーグルで銅メダルを獲得した堀島行真に、女子モーグルで5位と奮闘した川村あんり。他にも日本人選手だけでなく他国の選手まで「ID one」だらけではないか!
このブランド名、ちまたでもどうやら話題になっていたらしい。
いてもたってもいられず、スマートフォンを手に取った。
「なっ! 言った通りやろ?」
阪神コミュニティアンバサダー(CA)で日刊スポーツ評論家でもある岩田稔氏は誇らしげだった。
「この会社、ほんまにすごいねん。世界各国のスキー選手がここの板を使っているんやで」
岩田氏から初めて力説されたのはもう4、5年前のことだったか。
スキーブランド「ID one(アイディーワン)」を手がける「マテリアルスポーツ」は大阪・守口市にある会社。実は岩田氏の自宅から徒歩圏内にある。
一軒家とさほど変わらない大きさの会社の前を歩く度、岩田氏はマテリアルスポーツのすごさを延々と語ってくれたものだ。
会社の入り口には、女子モーグルで14年ソチ大会まで五輪5大会連続入賞を果たした上村愛子さんのポスターが張ってある。「上村さんの大ファンだった」という岩田氏は3年ほど前、アポなしで同社を突撃訪問。現役最後の2、3年間は同社のアンダーウエアを使用していた。
もちろん他の大手スポーツメーカーに用意してもらうこともできたのだが、そのウエアの機能性にほれ込み、「一緒に守口を盛り上げていきたいから」とタッグを組んだのだという。
今では藤本誠社長ともLINEでやりとりする仲。そんな縁もあって、北京五輪ではモーグル選手たちの熱戦をテレビにかぶりついてチェックしたそうだ。
「いや~すごかったな。表彰台にも『ID one』の板がこれでもかというほど並んでいたし、めちゃくちゃうれしかったわ」
普段はスポットライトが当たりづらい職人たちにも注目が集まる。五輪ならではの現象を喜ぶ人も多いようだ。【野球遊軍=佐井陽介】