ありがとう、お母さん! 阪神の若きセットアッパー湯浅京己(あつき)投手(22)が、「母の日」に最高の親孝行だ。1点を勝ち越した直後の8回に登板。石川昂、4番ビシエドをフォークで空振り三振に斬ると、5番阿部は150キロで押し込む中飛で3者凡退に仕留めた。高ぶる気持ちを抑え、任務を遂行した。

「去年までリハビリ組でほとんど投げている姿を見せることができなかった。今日、少しでも投げている姿を見せられて、うれしく思います」

ヒーローインタビューに呼ばれると、思いがあふれ出た。そっと見つめたのは三塁側ベンチ上のスタンド。バンテリンドームから車で2時間以上。三重・尾鷲市で精肉店を営む父・栄一さん(50)と母・衣子さん(49)の姿があった。19年4月の2軍戦以来、1軍では初めての観戦。母の目は感激でうるんでいた。

「いつもありがとう。絶対投げるから、見ててね」。母の日に毎年連絡を送る孝行息子は今年、感謝の言葉とともに「絶対投げる」と強い意志をメッセージに加えていた。19年6月に腰椎疲労骨折。その後も度重なる再発、新たな故障…。両親の支えがあったから、今の自分がある。リリーフの出番は試合展開次第だが、そんな思いを知ってか、野球の神様は最高の舞台を用意してくれた。特別なマウンドを、意気に感じないはずがなかった。

4月12日、バンテリンドームでの中日戦は1点リードの8回に登板。3安打2失点でプロ初黒星を喫した。全く同じシチュエーションで、大きく成長した姿を披露した。8試合連続無失点でリーグ2位、チームトップの9ホールドをゲット。「8回の男」の地位を確固たるものにしている。

「やられたらやり返す。それは頭の中にあった。これからもっともっと恩返しできるように頑張っていきたいです」

ようやく見せられた晴れ姿。背番号65の親孝行はまだまだ続く。【中野椋】

〇…母の日のこの日、公式戦開催6球場で昨年に続く2回目の「NPBマザーズデー」が実施された。従来は使えないピンク色のバットや打撃手袋、スパイクなどの使用が許可され、全選手がピンクのリストバンドを着用。阪神ナインでは近本、佐藤輝、大山らがピンクバットを使った。捕手の梅野は守備時にもピンクのプロテクター、レガースを着用した。また、審判もピンクのキャップをかぶり、ベースもピンク色に変更。大型ビジョンの映像もピンク基調になるなど、母への感謝で球場が染められた。

○…3番中野が四球&盗塁で勝ち越し点を呼び込んだ。同点の8回1死。今季158打席目で初の四球を選ぶと、すぐさまリーグトップタイとなる8個目の盗塁に成功。佐藤輝の中前打で三進し、ロハスの内野ゴロで決勝のホームを踏んだ。中野は「エラーでも四球でも、なんでも塁に出れば、自分の持ち味である足を生かすことができると考えていました」と会心だった。

阪神矢野監督(中軸を3人で抑えた湯浅について)「プレッシャーも一番かかる場面。苦しい中で追い越して、一番ある意味難しいけど、3人で抑えたのも成長やしね。本当にボールも開幕してからどんどん良くなっている。経験を積みながら成長もできている」

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