相当にふがいなかったのではないだろうか。

それは決して打順降格に対するモノではない。事を起こせなかった自分に対する腹立たしさ、だ。

7日の中日戦。阪神が1点を追う4回1死二、三塁。6番大山悠輔は三ゴロに倒れた直後、奥歯をグッとかみしめた。

二遊間のポジショニングは定位置。一、三塁を外してゴロを打てば、1点をもぎ取れていた。最低限の役割を果たせず、少なからず厳しい指摘を受けた場面。誰よりも本人が一番、自分自身を責めたはずだ。

今春の沖縄キャンプ、大山は人知れず内野ゴロを打つ練習を繰り返していた。そんなマル秘特訓を明かしてくれたのは、2月下旬のインタビュー中のことだった。

「犠牲フライだったり、場面によっては内野ゴロでも1点は入る。たとえ打率が下がっても得点は入れられる。実はフリー打撃から意識して、犠牲フライや内野ゴロを打つ練習をしているんです」

不格好でも確実に1点を重ねていく。チーム方針の「事を起こせ」を先頭で体現するのだと、背番号3は覚悟を決めていた。

時には1死一、三塁の場面を想定。右打者でも併殺打になりにくい一、二塁間を狙ってゴロを転がす練習も繰り返していた。

「もしかしたら周りの人たちから『あいつ何やってんねん』と思われていたかもしれないですけど…」

そこまでして泥臭い得点を重視していた主砲だけに、7日中日戦で惜敗した直後の胸中は容易に想像できた。

4月24日のヤクルト戦で左足を負傷。コンディションはまだ万全ではないのかもしれない。とはいえ、グラウンドに立っている状況で言い訳をするタイプではない。チームの浮沈を背負う立場である以上、じくじたる思いは結果で晴らしていくしかすべはない。

ということで、主砲の意地にも注目していた翌日8日の中日戦。大山は2回1死二、三塁で見逃し三振に倒れた後、2点を追う7回無死一塁で起死回生の同点2ランを放った。逆転勝利を呼び込んで破顔した。

「切り替えないとやっていけない。反省はしっかりしますけど、1日が終わったらまた次の日が来る。いつまでも引きずっていることはできない」

試合後、本人は前日も含めた過去との因果関係をやんわり否定。それでも左中間への大飛球から強烈な責任感をくみ取ったのは、記者1人だけではなかったはずだ。【遊軍=佐井陽介】

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