阪神伊藤将司投手(26)が、プロ初完封を無四死球で飾った。新型コロナ陽性による離脱から1カ月半ぶりの1軍登板。巨人に8安打を浴びながら、今季初勝利を挙げた。

巨人戦でプロ初完封と無四死球を同時に達成したのは球団史上初。昨季2ケタ勝利を挙げた左腕が甲子園で鮮やかに戦列復帰した。チームは連勝で、11年ぶりに巨人に3カード続けて勝ち越し。24日からの交流戦に勢いをつけた。

   ◇   ◇   ◇

プロ初完封を決めた瞬間、伊藤将は表情を変えずにグラブをポンとたたいた。お立ち台では真っ先に「ただいま」とあいさつ。気持ちを聞かれ、前日21日の長坂に続き「しびれました」の決めぜりふで笑った。

らしさが出たのは初めて先頭を出した4回。無死一塁から4番岡本和を134キロのツーシームで泳がせ、遊撃への併殺打に仕留めた。6回1死一塁では、3番吉川を変化球で併殺打。中軸に隙を与えなかった。

「ゴロアウトが非常に多く取れたので、そこかなと思います。前回失敗しているので、2度は失敗できない。その中で達成することができてよかったです」

新型コロナ陽性による離脱前最後の登板だった4月6日DeNA戦。1点リードの9回2死から同点とされ、完封を逃した。同じミスはしない。この試合の奪三振は2つも、ゴロアウトは14個を数えた。伝統の一戦でプロ初完封と無四死球を同時に記録したのは球団初。「OSAKA」の復刻ユニホームをまとい、快投でチームを連勝に導いた。矢野監督も「素晴らしかったですし、ゴロを打たせる投球が将司のらしさだと思う」と最敬礼だった。

離脱中も「コントロール良く、打たせて取る」ため時間を無駄にしなかった伊藤将。ボールの感覚を忘れないよう、選手寮の自室の床に寝転んで、天井に向かってボールを投げ続けた。「小学生ぶりかな、ほんと久しぶりっすね。お風呂上がりとかによくやってましたよ。天井に当てて怒られる時もありましたけど(笑い)」。シンプルなことだが、実際に取り組むと難しい。「天井ギリギリを狙う、その感覚が大事なんです。意外と指に引っかかるし、投球のイメージもできやすいんです」。繊細な指先の感覚を、黙々と研ぎ澄ました。

中6日で回るとみられる29日ロッテ戦(ZOZOマリン)には、千葉・横芝光町の実家から家族が観戦に訪れる予定。父正宏さん(52)は「地元で投げられるのは楽しみだね」と心待ち。左腕も「両親も見に来やすいと思いますし、すごく楽しみ。1カ月も休んじゃったのでその分チームに貢献したい」と力を込めた。次は地元で快投をみせる。【三宅ひとみ】

▼今季の阪神投手の完封勝ちは、4月5日DeNA戦西勇、同22日ヤクルト戦の青柳に次いで3人目。

▼阪神投手の巨人戦での完封勝利は、21年9月25日の高橋以来。無四球完封は、20年9月17日の西勇以来。生え抜き投手の無四球完封となると、13年4月9日の能見以来、9年ぶり。

▼阪神伊藤将がプロ初完封を初の無四死球でマークした。巨人戦でプロ初完封と無四死球を同時に記録したのは、18年8月16日の原樹理(ヤクルト)以来。阪神の投手では球団史上初めてだ。

▼阪神は17勝29敗1分け、勝率3割7分のセ・リーグ6位で交流戦を迎える。05年に交流戦が始まって以降、リーグ戦中断時にセの最下位だったのは初。勝率3割7分もこの時点では球団最低で、初の3割台。

▼阪神はデーゲームで、5月8日中日戦(バンテリンドーム)から5連勝。通算でも9勝10敗とし、5割へあと1勝とした。また日曜日の試合でも、4月24日ヤクルト戦(神宮)から5連勝となった。

▼阪神が巨人戦に3カード連続で勝ち越した。これは11年5月3~5日(東京ドーム)○●○、6月24~26日(甲子園)○○●、7月12~14日(甲子園)○○●以来、11年ぶり。前回この9試合で阪神は、ブラゼルが3本塁打。抑えの藤川が1勝4セーブと、投打の主役が持ち味を発揮した。

【関連記事】阪神ニュース一覧>>