歴史を動かす時が来た。阪神大学リーグ2部東リーグに所属する大阪電通大が、初の1部昇格をかけ、15日から甲南大との入れ替え戦(南港中央)に挑む。昨年11月まで同野球部で投手コーチを務めた阪神江草仁貴2軍投手コーチ(41)が、日刊スポーツを通し、教え子たちを激励。短期決戦に必要なマインドを説いた。

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大阪電通大は2部東リーグを8勝1敗1分けで、13季ぶり3回目の制覇を果たした。その後、追手門大との入れ替え戦出場決定戦を2勝1敗で突破。「めちゃめちゃうれしいですね。僕の時に勝ってくれよ~って。複雑なところはあります」。結果を知った江草コーチは冗談交じりに笑って目を細めた。

まだ戦いは残っている。15日からは1部甲南大と1部2部入れ替え戦。1部リーグのみだった1963年に加盟した大阪電通大は、70年に2部リーグができて以降、1度も昇格できていない。壁が高いことは分かっている。江草コーチは「平常心」が大切だと説く。

「勢いに乗っていけたら一番いいよね。そのまんま、何も飾らずに、自分たちらしい野球をやってほしい」

現役時代の05年、ロッテとの日本シリーズで腕を振った。プロの世界で一発勝負の怖さを味わってきたからこそ、アドバイスはシンプルだが重みがある。

同野球部の清田和正監督(52)は「江草コーチの貯金で投手は助かっています」と感謝する。5月30日の追手門大戦では、小島遼太投手(3年=大阪電通大高)が7回無失点。「江草コーチには、2ストライクからの変化球の精度を言われてきた。今日は決めることができたし、また良い報告がしたい」と恩返しを誓った。

4年生にとって、秋リーグで1部で戦うためのラストチャンス。投手陣のリーダーを務める北浦星河投手(4年=かわち野)は「江草コーチが離れてから、すぐに上がりたいと思っていた」と鼻息荒い。

「江草コーチがいなくなる時に、僕に『みんなを勝たせられるようにしてくれ』と言われて。江草コーチがいない分、僕が厳しくやっていかないといけなかった。言葉は響きました」

江草コーチとは練習メニューについて、激しく意見をぶつけ合わせたこともある。それでも、リーグ戦前には焼き肉屋で決起集会を開いてくれるなど、兄貴分的優しさに触れてきた。何よりの恩返しは勝利すること、そして創部初の1部昇格-。一丸となって朗報を届ける。【中野椋】