「世界の村神様」不在でも、侍打線がつながりを見せた。「侍ジャパンシリーズ2022」のオーストラリア戦(札幌ドーム)では、昨夏の東京五輪決勝から日本代表戦で4試合連続本塁打だった村上宗隆内野手(22)は出場しなかったが、村上の前後を固めてきた選手たちが躍動。村上に代わって4番に座った近藤健介外野手(29)が適時打を放つなど効果的な攻撃で、11安打9得点。来春のWBC本番に向け、打線の大枠が見えてきた。

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 試合前練習から「世界の村神様」は姿をほとんど見せなかった。村上は練習冒頭のアップには顔を出したが、打撃練習などは回避。代表戦5試合連続本塁打の記録更新がかかった今シリーズ最終戦は、初めてスタメンから外れた。ここまで十分すぎる結果を残し、来春WBCの“侍4番当確”ランプがついた背番号55は、試合中はベンチに座らず、壁に背中を預けながら戦況を見守った。

村神様がいない侍打線となったが、有事に備えた貴重な試金石となった。

2回は6番西川、7番岡本和の連打でチャンスメークし、1番塩見が2点先制適時打。3回は3番山田が四球で出塁すると、代走で起用された周東が3点目の起点となった。すぐに二盗を決めて相手にプレッシャーをかけ、代役4番の近藤も冷静に四球を選んでつなぎ、8番中野の押し出し四球を呼び込んだ。4回は2番近本の二塁打から近藤が適時二塁打を放った。

4番村上不在でも、多彩で魅力的な攻撃の形を何度もつくって得点につなげた。9日の試合後に栗山監督が「村上選手を含めて、日本の中心バッターに来てもらっている。それは本当に頼もしい。点を取ってくれそうな雰囲気がある。すごいなぁと思います」と話したように、各選手が高い対応力を発揮。村上だけに頼らない、打線の新たなオプションが加えられたことは、大きな収穫だ。

足が使えて勝負強い上位打線に、下位打線にもパワーヒッターを置く。今シリーズの4試合全てで5得点以上を奪った新たな侍打線の理想型は、4番に村上がどっしりと座ってくれたからこそ固まってきた。牧や岡本和の一塁起用など、侍ジャパンならではのマネジメントにも一定の収穫があった。世界一奪還を目指す打線の輪郭が見えてきた。【木下大輔】