これが朗希の成長した姿だ-。

「マイナビオールスターゲーム2023」に2年連続ファン投票1位で選出されたロッテ佐々木朗希投手(21)が、球宴初の奪三振。侍ジャパンで一緒に戦ったパドレス・ダルビッシュ直伝のスライダーなど変化球を駆使し、昨年失点した悔しさを晴らす予告通りの無失点に封じた。期待の球宴最速163キロ超えはならずも、WBC世界一で熱狂した野球ファンに「ドクターK」だけでなく「ミスターゼロ」の存在感も示した。

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佐々木朗が歯を見せない程度に口角を上げ、少しだけうなずいた。WBCで一緒に世界を制した阪神中野に156キロの直球で入ると、3球連続フォークで空振り三振。「フォークは頼りにしているボールなので」。続く秋山にはダルビッシュから学んだスライダーで連続空振り三振。球速も曲がり幅も自在になった新たな武器を「本当に安定してきて曲がり幅も曲がるようになって。すごい良いボールになってきているかな」と珍しく自画自賛した。

連続奪三振-。当然、すごい。でも、これは佐々木朗の日常でしかない。球場もテレビの前のファンも、なんだか物足りない。やはり一番沸いたのは3番ノイジーへの、この日初の160キロ超え。「161キロ」。続く161キロ直球は中安を許し「三振をとりにいったんですけれど…」。それでも「声援の中で投げられて良かったです」。12球団のファンの大歓声を浴びる本来の形の祭典を味わった。

初出場だった昨年は、球速への期待も感じる中で全23球中21球が直球。日本ハム大谷(現エンゼルス)に並ぶ球宴最速の162キロをマークも1失点が悔しかった。WBC準決勝メキシコ戦で3ランを喫して悔し涙を流した思い。球速よりも「0」へのこだわりは、より強くなった。ペナントレース同様にフォーク、スライダーも交えて直球は18球中8球。直球の平均球速も158・1キロで、今季公式戦ではもっとも遅い。レギュラーシーズンでは最速161キロ止まりも1度しかないが「僕の限界です」と苦笑い。変化球主体で無失点にこだわる投球を貫いた。

「先発だったのでまだ(他の選手と)話せていないので、これからたくさん話したい。山下選手。カーブとか特にすごいので。僕も投げたい。聞けたらいい。投げていない軌道や球速差が出来て、いろいろな面で幅が広がると思う」。選手間投票1位選出の若手有望株からも吸収し、自身のオールスター土産も持ちかえる。【鎌田直秀】