ついに目覚めた。阪神森下翔太外野手(23)が、復活の快音を響かせた。1点ビハインドの7回2死一塁。中日の変則左腕、斎藤の初球を狙った。外角138キロを引っ張ると、飛球が左中間へはずんだ。その間に一塁走者熊谷が長駆ホームイン。「ここ数試合、チャンスで打てていなかったですし、なんとかしたいという気持ちで打席に立ちました。大山さんが振れていたので、後ろにつなぐ意識でスイングした結果がタイムリーになってくれてよかったです」。背番号1が、16日広島戦以来、自身20打席ぶりの安打。貴重な適時打となった。

復活の一打には、岡田監督の采配があった。当たりの止まった森下に対し、5回の打席で代打がよぎったという。「3打席目、もしチャンスやったら代打行こうと思てたよ。(2死走者なしで)四球選びよったからなあ。それでちょっと我慢したんよ。で、4打席があった」と振り返る。さらに7回の場面は指揮官の攻めの姿勢が同点打を呼んだ。代打糸原に代打の代打ミエセスを投入し、四球で出塁。すかさず代走熊谷のカードを切った。「まあ、同点に追いついたらマルティネスが来ないからね」。竜の絶対的守護神をマウンドに上げない執念のタクトだった。

その流れに、森下も応えた。「ずっと(バットを)短く持っていたんですけど、あの打席から逆に長く持って、バットの先を感じるような打撃にして、うまく外の球を打てた。球種自体は頭に入っていた。外目に張っていた」。斎藤の初球、外角へ逃げるシュートを読み通り、長く持ったバットでとらえた。「全然チャンスで打ってなかったし、打点も取れてなかった。何とか試合に出る権利の望みをつないだかなと思います」と、胸をなで下ろした。

12球団最年長監督が、采配の妙を見せ、ドラフト1位ルーキーが意地の一打で、今季8度目のサヨナラ勝ちにつなげた。【石橋隆雄】