どんな厳しい声を突きつけられても屈しない。日本ハム伊藤大海投手(28)が27日、ソフトバンクとの開幕戦に登板した。ベネズエラとのWBC準々決勝は、決勝3ランを被弾して終えた。昨年のファン感謝イベントで開幕先発に指名されるも、国際舞台での悲劇もありチーム合流後、新庄剛志監督(54)から「どうする?」と判断を委ねられたほど。それでも自ら決意し、マウンドに上がった。5回2/3、9安打5失点と苦しんだが、気持ちを込めて90球を投げた。
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伊藤にはアンチらの悪意ある声に動じない屈強なメンタルが、備わっている。WBC準々決勝で敗戦投手になり、多くの誹謗(ひぼう)中傷を受けたことにも「誰かしら、こういう立場になっていたと思うので、それが僕で良かった」と、平然と言いのけた。敗退後の日々もSNS上のメッセージを「全部見ました。大半は応援してくれてるメッセージで、その中に、しょうもない(中傷)のがあって」と、笑い飛ばした。
3年前にさかのぼる。23年9月10日、自己最短3回1/3、6失点KOされた西武戦後、自身のSNSに「ボールで頭を打たれて引退しなさい」や、容姿を侮辱するような内容のメッセージが届くと、自身の思いを堂々、発信仕返した。「情けない投球をしたことは重々承知ですが、言っていいことと悪いことがある。意見と感想。それと誹謗(ひぼう)中傷は別物。絶対に許しません」。反響は大きく、同じプロ野球選手から「そういうのを出してくれるのは助かる」と賛辞も届いた。
翌日、再び矢面に立つ可能性も知りつつ、そう発信した真意を聞くと「タイミングもタイミングだったので」。SNS上でアスリートへの中傷が広まっていた現状を思っての言動だった。その上で「僕がまた言われるのは覚悟でいましたけど、僕は耐性がすごくあるので」と、びくともしなかった。伊藤大海という人間に、そういった、道理に外れた“攻撃”は無意味だよ、と世に知らしめた。
24年12月、日本ハムからポスティングシステムで米挑戦後、ソフトバンクに移籍した上沢への心ない非難が出始めると、伊藤は、条件面の差も含め「苦しい判断だったと思います」と思いやった。さらに、自身が翌25年のソフトバンクとの本拠地開幕戦先発を指名されていることにかけ「僕のホーム開幕戦に志願してでも来るんだろうな。それぐらいしてくれないとファイターズファンも納得いかないのでは」とニヤリ。刺激的な発言をすることで、上沢への火の粉が、自分にも降りかかるよう仕掛けた。
翌春の対戦実現はなかったが、1年後、開幕の舞台で上沢と相まみえることに。伊藤は上沢について「(日本ハム時代)移動から試合後まで、しょっちゅう野球の話をさせてもらいました。長い回を投げるために大事な気持ちの切り替え方を勉強しました」。失敗にも悪意ある言葉にも心揺さぶられることはない。常に自分のミッションを全うするだけ。そう教えてくれた“心のアニキ”と、マウンド上で、気持ち良く力をぶつけあった。【永野高輔】



