<オールスターゲーム:全パ0-7全セ>◇第1戦◇18日◇西武ドーム

 全パの西武岸孝之投手(29)が本拠地で圧巻の奪三振ショーを見せた。2回、全セのエルドレッド、キラ、バレンティンを3者連続空振り三振に仕留めるなど、2回を投げて無安打無失点の完全投球。5月にノーヒットノーランを達成した実力を見せつけた。人前に出ることを嫌う“控えめエース”がホームの大声援を一身に受けて躍動。敢闘選手賞にも選ばれ賞金100万円をゲットした。

 これがノーヒッターの実力だ。岸が全セの好打者を相手たちを、お祭りムードなど一切感じさせない本気投球でねじ伏せた。「緊張するかなと思ったけど楽しめました。チェンジアップも申し訳ないかなと思いながらも使わせてもらいました」。直球主体でカーブとチェンジアップを織り交ぜ、2回を無安打、4奪三振でまとめ上げた。

 全力、全開のプレーでファンを喜ばせた。「せっかく地元でやるので、特にライオンズファンにいい投球を見せたかった」。1回2死で迎えた鳥谷への2球目は自身プロ最速を更新する150キロをマーク。カウント1-2からの4球目も再び150キロ直球で二ゴロに打ちとる。続く2回にはエルドレッド、キラを連続空振り三振に斬り捨て、最後の見せ場へ向かった。

 快投のフィナーレは昨季の本塁打王との力勝負だった。2回2死、同じ84年生まれのバレンティンに一騎打ちを挑んだ。「勝負したい相手だった。抑えてやろうという強い気持ちでいった」。対戦直前にニヤリと不敵な笑みを浮かべると、ギアを上げた。140キロ後半の直球を5球続けて追い込む。最後も真ん中高めの150キロ直球で空を切らせ、この日、4つ目の三振で役目を終えた。

 人見知りで目立つことを嫌う岸がオールスターの大舞台で“キャラ違い”の大活躍。自身のプロ最速まで更新して「(スピードガン表示の)150なんて見たことない。うそだろ!?

 って思った。まさか西武ドームで出るとは」と本人もびっくりだった。2イニング限定での登板で普段とは異なる状況だっただけに、いつも以上に力を入れられたことも事実。「後半戦へ向けてということとは別物。イニングが分かっていたから、思いっきり投げられただけ」と最後はいつも通り冷静に振る舞った。

 オールスター初先発でセ・リーグを代表する強力外国人トリオの3者連続空振り三振など、ド派手に躍動してみせた。自身3度目の夢舞台は「抑えたから『楽しかった』と言える。ただ、それだけですよ」とシーズンさながらの真剣勝負を大いに楽しんだ。【為田聡史】