外はやや薄暗い。時間は5時。午前、ではなく午後5時だ。宮城野部屋の力士らがまわしを締めて、8月からの新天地、旧東関部屋の稽古場で体を動かす。涼しい風を感じながら、朝稽古ならぬ、夕稽古で場所前に調整していた。

7月末に師匠になった宮城野親方(元横綱白鵬)の発案だ。同親方が現役時代から取り入れていた稽古方法。朝稽古とは別に実施し、主に下半身トレーニングを行う。朝稽古後の午後にジムなどでトレーニングを行う力士は多くなってきたが、部屋の稽古場で体を動かすのは珍しい。30キロのサンドバッグをかついで土俵を歩くなど、出身のモンゴル式ともいえるメニューで下半身をいじめ抜いた。

若い力士を中心に早速、効果は現れている。序ノ口デビュー場所で優勝した大谷は「あのトレーニングを続けて下半身を強化したから、場所前の出稽古で幕下力士と相撲を取っても勝てた」と手応えを口にする。21年学生横綱で幕下15枚目格付け出しデビューの川副も、この日、7番相撲で勝ち越しを決めた。「場所前の師匠のトレーニングのおかげです」と話している。いきなり、指導力を発揮している。【佐々木隆史】

序ノ口優勝を決めた大谷(撮影・小沢裕)
序ノ口優勝を決めた大谷(撮影・小沢裕)
入門会見で宮城野親方と握手する川副圭太(22年8月22日撮影)
入門会見で宮城野親方と握手する川副圭太(22年8月22日撮影)