父に認めてもらうことが、何よりの原動力だ。10日目に狼雅を破り勝ち越しを決めた新十両の湘南乃海(24=高田川)は場所前の取材で「おやじに認められたいから、頑張っているところがあります。十両に上がった時も『俺はおめでとうとは言わない。遅いくらいだ。遅い分を取り返せ』と言われたんですよね」とうれしそうに笑った。

狼雅(左)を引き落としで破る湘南乃海(撮影・河田真司)
狼雅(左)を引き落としで破る湘南乃海(撮影・河田真司)

野球少年で相撲未経験ながら、神奈川・大磯中時代に高田川部屋を見学したことで入門を決めた。卒業後の進路が決まると、幸先よくスタートを切るために父との猛特訓が始まった。学校から帰ってくると一緒に公園に向かい、1時間の四股踏み、腕立て伏せ300回、電柱めがけたテッポウ、すり足…。冬場でもびっしょりと汗をかくほどのメニューを毎日こなした。「体を動かしているうちに暑くなって、パンツ一丁でやっていました。大人同士がけんかしてるんじゃないかと間違えられて、警察を呼ばれたこともありましたね」という笑い話もあるほど。鍛え上げた足腰は今も自慢だ。

狼雅(右)を攻める湘南乃海(撮影・菅敏)
狼雅(右)を攻める湘南乃海(撮影・菅敏)

14年春場所で初土俵を踏んだ“中卒たたき上げ”は、約9年かけて関取の地位をつかんだ。新十両場所で勝ち越しを決めても、浮かれることはない。「明日があるんで。1日一番集中して、全力を出し切ります」と白星を積み重ねる。厳しい父への恩返しになると信じて。【平山連】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)