元幕内徳勝龍の千田川親方は奈良の実家、母青木えみ子さん(61)へ引退の決意をメールで伝えた。今年初場所で幕下に陥落した時から覚悟を決めていたという母は「分かった」と短い言葉だけを返信した。

「そろそろかなと思っていましたし、ねぎらいの言葉は直接会った時に言おうと。(引退後は)親方になれると分かった時に本当にホッとしました」

野球少年だった千田川親方が相撲を始めた小学校時代、奈良から大阪の道場へ車で約1時間半の道のりを送り迎えした。「何をやるにも体が資本」と食事面から支え、09年初場所の初土俵から先場所まで1度も休まなかった丈夫な体の礎を築いた。「体がしんどいとか不安とか、1度も聞いたことありません」。力士として務めきった思いをだれよりも理解している。

寂しさよりも安心感が強い。「ショックはないですよ。ここまでよく頑張ったという思いしかないです」と言い、冗談ぽく笑いながら「できることなら早く発表してほしかったですね。『アレ』とかぶったら(引退の)ニュースなんて吹き飛んでしまうでしょ」。

千田川親方をはじめ、青木家は熱烈な阪神ファン。18年ぶりの「アレ」を目前にする岡田阪神に熱狂する日々という。少年時代、強打の捕手だった千田川親方は、阪神佐藤輝の入団前に内野起用を力説するなど専門的で熱かった。その視線を今後は弟子の育成に向けていく。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)