大相撲夏場所6日目、結びの一番で観客のマナー違反があった。豊昇龍と玉鷲が立ち合う直前、場内が静まりかえる中、向正面のマス席からやじにも似た「ハッケヨイ!」の声があがった。一部観客がつられて笑っていた。
NHKラジオで解説を務めていた中村親方(元関脇嘉風)は、放送中に「これは力士に敬意がないですね」と指摘した。その翌日、中村親方は「大相撲への侮辱行為ですよ」と熱い思いを語ってくれた。
この場面、土俵の上の当事者たちは、どう感じていたのか?
敗れた玉鷲は「集中していたから、聞こえなかった」と振り返った。勝った豊昇龍も「集中していると、周りのことは気にならない。分からなかった」と証言した。静寂を切り裂くような「ハッキヨイ!」だったが、耳に入らなかったのは両者のすごさでもある。
立ち合いの呼吸も合い、取組には影響していないように見えた。
2人を合わせた立行司・39代木村庄之助はどうか。後日、行司部屋で聞いた。
あの「ハッキヨイ!」は聞こえたのか?
「聞こえましたよ。集中していますが、行司は(力士からの)『待った』も聞こえないといけないので」と、聞こえる必要性を口にした。さらに、こう続けた。「行司が待ったをかけるのは、力士が手をついていない時など。力士は集中していますし、むやみに止めることはできません。あのくらいの力士になると、声は関係なく集中しているんじゃないですか?」。
力士も行司も、まさにプロの仕事だった。
正面で審判長を務めていた粂川親方(元小結琴稲妻)にも聞いた。
「(声は)聞こえました。あれはないなと思いました。でも(力士)2人は気にしてなかった。おすもうさんは、聞こえてないと思います」
審判部副部長として、「お客さんのマナーの問題。よくないかけ声です。やめてほしい。取組には影響はないと思うけど、もし気がそれたり、気合が抜けて、ケガをすると怖いですから」と警鐘を鳴らしていた。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)


