WBC世界バンタム級王者山中慎介(32=帝拳)が、辰吉Jrに豪快なKOシーンを見せつける。14日、大阪市内のホテルで、16日に行われる8度目の防衛戦(大阪府立体育会館)の調印式に出席。憧れの元WBC同級王者辰吉丈一郎の次男で、同日にデビュー戦を行う寿以輝(18=大阪帝拳)を激励した。寿以輝は、山中が持つ緑のベルトを前に、夢の世界王者への決意を新たにした。

 ひな壇後列の寿以輝は、前列の山中が置いたWBCバンタム級ベルトを見つめた。帝拳ジムの好意で、同席した会見。デビュー前の選手として異例のVIP待遇で、緑のベルトを見て「ぴかぴかでした。家の(ベルト)はぴかぴかじゃない。ぴかぴかですごいなと思った」と憧れを口にした。

 WBC世界バンタム級王座。かつて父丈一郎が3度獲得したものだ。父が3本目をとった97年11月のシリモンコン戦で寿以輝は1歳3カ月。リング上でベルトを巻いた父に抱かれた。「少しだけ覚えています」。

 いつもベルトがかたわらにあった。大阪・守口市内の自宅にはガラス張りの4段ある棚に、上からベルト3本が飾られている。すべてWBCバンタム。最下段は空いており、父はそこに4本目を入れることに執念を燃やしている。「(父は)4本目が目的であることは知っています」と寿以輝。ベルトを目指す父の背中、そして空いたままの棚。その姿を見続けて育ち、自らプロボクサーになった。

 ボクサー人生の目標は、父と同じ緑のベルトだ。「基本、WBC。ほか(の団体)は知らないので」ときっぱり。ジム仲間の中沢に「まるで素人やな」と突っ込まれて苦笑い。体重はスーパーバンタム級のリミット55・3キロを200グラムアンダー。この日のひな壇では「(体調は)いい感じ。絶対勝っていい形でつなげたい」と必勝宣言。王者山中の露払いを務める覚悟。「辰吉家」4本目のベルトを目指し次男の戦いがスタートする。【益田一弘】

 ◆辰吉-シリモンコン戦 世界戦3連敗中の辰吉が、16戦無敗の王者シリモンコンに挑戦。序盤流れをつかむと5回にボディーで効かせ、コンビネーションからダウンを奪取。6回に入ると動きが鈍くなり、王者の捨て身の反撃を受ける。7回も左フックをまともに浴びるなどピンチを迎えたが、接近戦での左ボディーで2度目のダウンを奪う。再開後、一気の連打でレフェリーストップとなり、同回1分54秒TKO勝ちした。