12年ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダリストで元WBA世界同級スーパー王者の村田諒太(37=帝拳)が、グローブを置いた。

28日、都内で会見し、現役引退を正式に表明した。今後の進路は未定としながらも自身の会社を立ち上げ、ボクシング界への恩返しとして大手企業と組んでコンディショニングや疲労回復の研究を開始。知識と経験を後進に伝える仕事に意欲を示した。また本人は否定したものの、周囲からは世界的プロモーターへの期待の声が上がった。

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ラストマッチは昨年4月の“ミドル級最強”ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との2団体王座統一戦となった。少し言葉を詰まらせた村田は、「もともとゴロフキン戦が最後だと。引退以外の選択肢はなかった」。約1年間、自らに問い続け、出た答えに現役続行はなかった。

「ボクシングに求めること、ボクシング界に対してできることが自分の中に見つからなかった。Amazonという大きな資本が入り、今まで以上に稼げただろうが、その欲を求めてしまうのではないか。執着が芽生え始めた自分に気づいたのが最大の引退理由」

そしてスッキリした表情で「これは引退という名のスタートだと思っている」と次の挑戦を見据えた。

今後は未定ながら、自身の会社を立ちあげた。「選手への良いロールモデルになれれば、自分の存在価値がある」。すぐに消費財化学メーカー大手と組み、自らの知識と経験をもとにコンディショニング、疲労回復、減量の研究に入る。またゴロフキン戦までの自身のメンタルをまとめる作業にも着手。1日3~4時間の英語の勉強も続けている。

世界的プロモーターで、所属ジムの本田明彦会長(75)の“後継者”への興味を問われると「それは会長しかできない。まだやられているし、おこがましい」と否定した。ただ同会長のサポートには「役に立てることがあれば、やらせてほしい」と言った。本田会長は「ボクシング界に貢献したい気持ちがすごく出てきた。将来的にいろいろ関わってくると思う」と期待を寄せた。

村田を支える関係者からも「将来的に本田会長のような世界的プロモーターになれるよう知識と経験を積んでほしい」との待望論が挙がる。米プロモート大手トップランク社のボブ・アラムCEOとの関係も深い村田。大きな可能性を秘め、第2のステージに進む。【藤中栄二】