プロボクシングWBC世界バンタム級1位の那須川天心(27=帝拳)が格闘技55戦目で初黒星を喫した。ボクシングデビュー8戦目で初の世界戦も同級2位の元WBA世界同級王者・井上拓真(29=大橋)に0-3の判定負けを喫し、王座獲得に失敗した。キックボクシングと総合格闘技を含めた不敗神話は止まったが、試合後の会見で早々にリベンジを宣言した。

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那須川は胸を張って試合後の会見に臨んだ。「悔しいですよ。でもやってきたことを出し切った結果。悔いはないです。またボクシングが好きになりました」。格闘技人生で初めて経験する敗北を、すっきりとしたどこか充実した表情で受け入れた。

序盤は「天心の日」になると思われた。1回に左強打で井上のアゴをはね上げ、2回にはひざを揺らした。流れが変わったのは3回。距離を詰めた井上の乱打戦に巻き込まれてペースを乱すと、パンチの精度も落ちて「井上の日」へと流れが変わった。

「練習してきた距離感がつかめず、先手を取られたのが敗因。立て直せなかった。経験の差、深みの差で負けた」。判定が発表されるとすぐに井上のもとに歩み寄り握手をしながら頭を下げた。リングを去る前にはリング上で正座して四方の観客にも頭を下げた。

デビューから2年7カ月。白星を重ねてきたが、ボクシングの型や基本動作の習得にもがいた。「スパーリングや日々の練習ではめちゃくちゃ負けている。自分は天才じゃない。格闘技は地道な作業の積み重ねが大事。急に強くなったりはしない」。その教訓を肌で感じた1日になった。

キック時代から続く不敗神話も54連勝で止まった。ボクシングは7戦全勝で世界戦のリングに駆け上がったが、頂は高かった。「無敗にこだわって生きてきたわけじゃない。こういうこともいつかあると思って生きてきた。これも人生」。心が解放されたのか、少し口元が緩んだ。

完敗とはいえ死力を尽くして誇り高く負けた。リングを下りる那須川に大観衆から拍手が湧き起こった。「リベンジ、しますよ。必ず。それを見せるのがオレの生き方」。格闘人生初の敗北は、新たな“天心復活神話”の始まりでもある。【首藤正徳】

◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日、千葉・松戸市生まれ。5歳で空手を始め、小学5年でジュニア世界大会で優勝し、キックボクシングに転向。14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月にプロ6戦目で史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年からRIZINにも参戦。18年6月、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者・武尊を判定で撃破。23年4月に6回判定勝ちでボクシングデビュー。24年10月にWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座獲得。身長165センチの左ボクサーファイター。

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