<石井節(下)>

 北京五輪柔道100キロ超級金メダリストで、大みそかの「Dynamite!!」(さいたまスーパーアリーナ)で総合格闘技デビューする石井慧(23=アイダッシュ)が、吉田秀彦(40=吉田道場)撃破に自信を見せた。「石井節」最終回は柔道、総合格闘技での大先輩、吉田との対戦に向けた意気込み、リラックス方法などをユニークな発想で語った。

 吉田戦を迎えるにあたり、石井は米国総合格闘技団体UFCヘビー級王者ブロック・レスナー(32)を引き合いに出した。

 石井

 (吉田戦のシミュレーションは)できてるけど、ブロック・レスナーとやることを思えば全然大丈夫でしょう。あんな太い腕にパンチされるなんて、想像しただけでぞっとするでしょ。見たことあるでしょ。日本人同士の方が痛さを感じないでしょ。そういう純粋なところで。

 続けて、将来的に対戦したい相手に、レスナーの名を挙げた。

 石井

 あの大胸筋が好き。いい大胸筋をしている。UFCでヒールですから。朝青龍とおんなじ臭いがしますわ。できることならブロックにパンチされたくない。最強の中の1人だと思うんです。将来的には同じ土俵で戦いたいという気持ちはありますね。

 北京五輪ではプレッシャーのかかる中、柔道男子66キロ級の内柴正人(旭化成)に続く2個目の金メダルで、不調を極めた柔道ニッポンの牙城を守った。石井が総合デビュー戦と、五輪について持論を展開した。

 石井

 どっちがどっちというのを比較するのは失礼だ。やっぱ五輪の代表に対して失礼じゃないかな。国の代表なわけだから。総合は自分1人の問題だからね。本当に背負ってきたものが違いますので、そこは。ぼくが背負ってきたのは日本代表だからね。

 五輪代表の重みを熱く語る一方で、金メダリストという実績については実に淡泊な心情を明かし、こちらをけむに巻いた。

 石井

 (過去の実績は)自分の情熱の邪魔になるから(こだわらない)。自分の情熱はポケモンマスターです。やっぱりクレヨンしんちゃんはよかった。作者が亡くなったので、黙とうをささげます。(吉田戦の)勝利を作者にささげます。映画になった「BALLAD

 名もなき恋のうた」を見て、実に面白かったあれは。リラックスするにあたってクレヨンしんちゃんの漫画の映画はすごい名作。映画も見たし、悲しかった。

 相手の吉田も、石井がかいくぐった「国を背負う」プレッシャーを乗り越え、金メダルを獲得した猛者だ。総合格闘技でのキャリアにも一日の長がある。

 石井

 勝つということですね。勝つよ。ここで負けたら終わりですわ、自分の人生。デビュー戦だけど背水の陣。柔道着は着ないですよ。(入場曲は)アメージングな曲にしたいよ。「月月火水木金金」みたいな。そうならないかもしれないけど。リングネームは「石井ブロック」でお願いします。

 ブロック・レスナーからクレヨンしんちゃんまで、何が飛び出すか分からないユニークなインタビューの中で、時折、鋭さが宿る眼光に、吉田戦への覚悟を垣間見た。デビュー戦まであと9日。日本の総合格闘技界の未来を担うと期待される男が、いよいよベールを脱ぐ。【聞き手・構成=塩谷正人】