大相撲の貴乃花親方(45=元横綱)が、内閣府に対して告発状を提出した。9日、部屋のホームページを更新し、代理人の弁護士を通じて、日本相撲協会を監督する内閣府の公益認定等委員会に告発したと発表した。元横綱日馬富士関による暴行事件に関連して、1月に理事を解任されたことや、同事件への協会の対応について「重大な疑義が生じています」と訴えた。明日11日の春場所初日(エディオンアリーナ大阪)を目前に、貴乃花親方と協会との対立が再び鮮明になった。

 貴乃花親方と相撲協会の対立は、新たな局面に突入した。暴行事件の被害者となった、弟子の貴ノ岩が春場所で3場所ぶりに出場すると明言した9日、貴乃花親方は部屋のHPを更新した。警察や検察の判断も、相撲協会の処分も出そろい、貴ノ岩が復帰することで、ようやく事件が完結に向かうと思われた矢先だった。「内閣府公益認定等委員会に対する告発について」と題し、HPに記したのは、内閣府の公益認定等委員会に立ち入り検査や適切な是正措置を求めるものだった。

 協会の適切な運営について「重大な疑義が生じています」と表現した。元日馬富士関による暴行事件の調査、報告は公益財団法人として透明性に欠け、中には違法な手段も用いていると指摘。HPでは2つの点で協会を強く非難している。

(1)調査について

 「第三者により行われたものではありません。(中略)被害者の主張を聞く前に中間報告要旨を公表し、その後の最終報告においても重要な点で被害者の主張が全く反映されておりません。(中略)公正中立な内容とは到底評価できないものであり、身内による全く不十分な調査と報告をもって済ませようとしています」。

(2)理事解任について

 「私の理事解任理由とされた事項は、いずれも、法的には、解任事由に相当するような理事の職務義務違反になると認めることは困難なものです。それにもかかわらず、評議員会は、私が求めた弁明の機会を与えずに、理事解任という重大行為に及んでいます」。

 調査について、担当した協会危機管理委の高野委員長は、貴乃花親方、貴ノ岩を含めたすべての関係者への聞き取りを行ったことから、正当性を主張している。理事解任については、暴行事件が起きた秋巡業中に、当時巡業部長でありながら協会への報告義務を怠ったことなどを理由としている。

 貴乃花親方はこの日午後に大阪市内で開かれた理事会、年寄総会を欠席した。協会関係者によると欠席理由は「所用」。初場所後の理事会、研修会など、協会行事への不参加を続けている。八角理事長(元横綱北勝海)は「よくないよね。何の用か知らないけど」と苦言を呈し、両者の溝の深さをのぞかせていた。

 ◆レスリングも告発状 女子レスリングで五輪4連覇を果たし、国民栄誉賞も贈られた伊調馨が、日本レスリング協会の栄和人強化本部長からパワーハラスメントを繰り返し受けたとして、レスリング関係者が1月、代理人弁護士を通じ、内閣府の公益認定等委員会に告発状を出していたことが先月28日に発覚した。これを受け日本協会は6日、問題解明に向けた聞き取り調査を第三者機関に委ねることを決定。内閣府も告発状を出した関係者から話を聞く意向を明らかにした。