大相撲の横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が、同じ02年初土俵の前頭琴奨菊(34=佐渡ケ嶽)、十両豊ノ島(35=時津風)と申し合いを行った。6日、都内の田子ノ浦部屋に琴奨菊と豊ノ島が出稽古で訪れた。稽古は報道陣非公開で行われたが、大関高安は時津風部屋に出稽古だったため、3人で汗を流した。

琴奨菊と豊ノ島は高校から02年1月の初場所で、稀勢の里は中学から同年3月の春場所で初土俵を踏んだ。年齢は2人よりも3学年下になるが、ほぼ同期の3人が集まり、稀勢の里は「力を抜かずに最後まで必死にきてくれたから、いい稽古になった。昔を思い出しながら。本当にいい稽古だった」と、晴れやかな表情で振り返った。

全員の話を総合すると、稀勢の里は15番程度取ったことになる。豊ノ島は「横綱とは7番取って全敗」で、琴奨菊は「横綱とは8番ぐらいかな。勝ったのは2、3番」と明かした。新弟子が半年間通う相撲教習所に一緒に通い、当時から「誰が出世するかと争っていた」(琴奨菊)という。それだけに「3人で、あのころを思い出してやろうということで」(豊ノ島)と、2人の提案に稀勢の里も快諾して実現した。

稀勢の里も「教習所の時は2人が圧倒していた。自分は歯が立たなかった。それよりも十両に上がった後の巡業かな。3人というか(元前頭で09年に引退した)片山も含めて4人で毎日稽古していた。(当時も)必死だったけど、今日の方が必死だったかも」と、笑みを浮かべながら懐かしそうに話した。

故障で幕下まで落ちた豊ノ島は、本場所では約3年も対戦が遠ざかっており、稽古をしたのも「めちゃくちゃ久しぶり」だという。「雰囲気もよかったし、懐かしい感じがした。いい刺激になった」と、2年ぶりに関取に戻った先場所で11勝を挙げ、幕内返り咲きも目前だけに活力にしていた。琴奨菊も「強いよ、横綱は。ただ、1度振り返るのも大事だと思った。(稽古が)実現できたのは大きい。若手との稽古も大事だけど、自分が絶対に負けたくないと思える相手とやることで、プラスアルファで得るものがある」と、心身共に充実した様子だった。

初場所(13日初日、東京・両国国技館)に向けて、7日は横綱審議委員会(横審)による稽古総見が行われる。昨年11月の九州場所で、稀勢の里は途中休場し、横審から「激励」を決議され、奮起を促されている。進退問題を乗り越えるのは、その横審の委員を前に、一定の仕上がりを見せつけなければならない。そんな緊張感の高まる日を前に、長年のライバル2人からの熱い“激励”は何よりも力になった。「楽しかったです。1番いい稽古になった」。正念場となる初場所に向けて、初心に立ち返った様子だった。