新大関貴景勝(22=千賀ノ浦)が東前頭筆頭の北勝富士に押し出され、今場所初黒星を喫した。

関脇だった先場所まで4連勝していたが、しぶとい押し相撲に屈した。直前の取組で大関高安、豪栄道が立て続けに敗れる中、その流れを止められなかった。4日目の相手は5連敗中と相性の悪い小結御嶽海。

昭和以降で新大関Vを果たした6人のうち、序盤5日間で連敗した力士はいない。負けられない一番になる。

桟敷であおむけになり、天井を見上げた。ゆっくり起き上がり、貴景勝は少し首をひねって土俵に戻った。高安、豪栄道に続く3大関の総崩れ。「いつも通りいったと思うけど、ちょっとしたこと、ちょっとしたことなんですけど…」。

若干のズレが大関としての初黒星につながった。埼玉栄高の4学年先輩に左右でおっつけられながらも前に出たが、圧力が伝わらなかったのか。土俵際で耐えられ、のど輪とハズ押しで貴景勝の上体は伸び上がった。「押しの角度や体の預け方とか、いろんなちょっとしたことの違いがあった」。幕内では過去6勝3敗の相手。「相撲って難しい。ズレても勝つことはある。相手がいいところにはまった感じ。闘争心と感覚で取っているから(分からない)」と、反省点を技術面に落とし込まなかった。

序盤戦で最大のヤマ場を迎える。06年夏場所の白鵬ら新大関優勝を果たした6人のうち、序盤5日間で連敗したケースはない。4日目の相手は御嶽海。最近5連敗中で、大関昇進を決めた先場所はなすすべなく敗れた。関脇以下に苦手意識をつくるわけにはいかない。

勝っておごらず、負けて腐らず。風呂場で洗い直した髪と同様、表情はさっぱりとしていた。「精神的にどうとか落ち込んだりはない」と、動揺や落胆は示さない。連勝発進から一夜明けたこの日の朝稽古では「2勝13敗もあるから」と、最悪の場合も想定することで、感情の振れ幅を最小限にとどめている。「勝ち負けで判断すると自分の相撲が崩れる。悔しいですけどね、明日があるから明日にぶつけたい」。幕内最年少の22歳は、地に足をつけていた。【佐藤礼征】