新型コロナウイルスの感染拡大に角界も揺れている。日本相撲協会の尾車事業部長(元大関琴風)が28日、大阪・堺市の尾車部屋で行われた二所ノ関一門の連合稽古後に、春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)開催について個人的見解を示した。

状況からして可能性の薄い通常開催について触れ「相撲協会だけ通常開催はありえない」と明言。同協会は3月1日に臨時理事会を開き、通常開催、無観客開催、中止の中から最終決断を下す。全国的にスポーツやイベントの自粛ムードが高まっており「収束というよりは状況は厳しくなっている。理事会で皆さんの意見を聞きたい。過去の事例が分からないから」と頭を抱えた。

力士らにも影響は及んでいる。29日に開催予定だった、大関とりの朝乃山が所属する高砂部屋の激励会の中止がこの日に決定。約1000人が参加予定だったといい、部屋関係者はこの日もホテルに出向いて折衝に追われた。朝乃山にとっては大関昇進に向けて、気合を入れるまたとない機会だった。朝乃山と同じ近大出身で12月に定年を迎える高砂親方(元大関朝潮)にとっても、師匠として迎える“第2の故郷”での最後の場所の激励会だったが無念の中止となった。

地方場所ではファンサービスで稽古見学が可能な部屋が多いが、今年は例年通りとはいかない。横綱白鵬が所属する宮城野部屋は、25日の稽古始めから一般客や報道陣の見学を禁止。初場所で平幕優勝を果たした徳勝龍が所属する木瀬部屋も、報道陣の見学を規制している。一方で横綱鶴竜が所属する陸奥部屋は見学が可能。稽古場に入る際には、マスク着用と手のアルコール消毒が必須で「熱のある方やせきをしている方、基礎疾患のある方はご遠慮下さい」と書いた紙を張り注意喚起している。異常事態に角界も細心の注意を払っている。