関脇正代(28=時津風)が悲願の初優勝に前進した。大関貴景勝との2敗対決を力強い立ち合いの踏み込みから、最後は突き落としで制した。関脇で2場所連続11勝と大関の座も見据えて残り2日。今日14日目の大関朝乃山戦にも勝てば、熊本出身力士初の優勝が大きく近づく。

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大関の押しを正代は、しのいで勝機を見いだしたように見えるが、前に圧力をかけ続けた攻めの姿勢こそが勝因だ。押し切れない貴景勝が苦し紛れに、横に回っていなしても微動だにしない。あれだけ胸を出す相手は、本来の押し相撲ならゴッツアンなのに押し切れない。正代の前に出る力が本物ということだ。14日目に対戦する朝乃山は、この日の御嶽海戦のように押し負けしないで左上手を取れるか。正代は粘り強く圧力をかけられるかだな。

新入幕の翔猿は勝ち運に乗っている。待ったと思い一瞬、力が抜けて隆の勝に出られたが、これが幸いしたか。喜んで出る隆の勝の右腕を、うまく引っかけ泳がせた。まともに当たったら勝機は薄いのだから何か考えていたんだろう。14日目も動き回る中で何か仕掛けがあるだろうから、貴景勝も取りづらいはず。大関の意地を朝乃山ともども出せば大混戦の千秋楽が面白くなる。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)