最高位小結で昨年7月場所中のコンプライアンス違反で3場所連続休場の処分を受けた西幕下56枚目の阿炎(26=錣山)が、4連勝でみそぎの勝ち越しを決めた。篠原を立ち合い、右差しから休まず攻めたすくい投げ。

一時は引退も覚悟したが、周囲の支えにも感謝しながら、ここから再び番付を上げていく。

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1年前は大関候補にもあがっていた。ブランクがあっても、幕下下位では力が違う。3連勝で勝ち越しに王手をかけて迎えた阿炎の4番相撲。立ち合い、素早く左を差して圧力をかけ、篠原に何もさせず最後はすくい投げで仕留めた。小結だった19年九州場所以来の勝ち越しに「うれしいです」と素直にはき出した。

昨年7月場所前や場所中、新型コロナウイルス感染症防止のため日本相撲協会が策定したガイドラインに違反する形で飲食など不要不急の外出を4回も繰り返した。協会は出場停止3場所、5カ月50%の報酬減額の懲戒処分を下した。阿炎は師匠の錣山親方(元関脇寺尾)と相談の上、引退届を出したが受理されず。将来性を見越した形の温情に応える形で今場所、復帰を4連勝で飾った。

取組前、取組後と館内から大きな拍手がわき起こった。阿炎は「土俵にもう1度、上がらせてもらった。拍手とか起きるのはうれしい。感覚はだいぶ戻ってきた。まだまだ成長途中。いい相撲をとれるよう、集中していきたい」と言った。

昨年に結婚し、娘も生まれた。不祥事前にも、SNSで炎上騒動を起こすなど、角界きっての「やんちゃ」は人が変わった。「待ってくれている人たちがいる。頑張っていくためにも、稽古しかない」。師匠をはじめ、迷惑をかけてきた人たちへの恩返し。そして、愛する家族のために。さらに勝ち星を伸ばして、元にいた地位への返り咲きを目指す。【実藤健一】