日刊スポーツでは大相撲評論家として、日本相撲協会を退職した先代錦島親方(元大関朝潮)の後任に、第66代横綱若乃花の花田虎上氏(50)を招聘(しょうへい)しました。弟貴乃花(元横綱)と空前の「若貴フィーバー」を巻き起こし、小兵ながら頂点まで上り詰めた花田氏は、協会退職後も明解な相撲解説などマルチに活躍中です。本場所中は「若乃花の目」と題したコラムで、取組を柔軟に解説していきます。

 ◇  ◇  ◇

心配していた新横綱最初の土俵入りも、照ノ富士は堂々と務めました。私も国技館で見ていましたが、一番の見せどころのせり上がりは、膝に負担がかかるからでしょう。本来は、もう少しゆっくりせり上がるところですが、毎日やれば相当の負担になるから、そこは大目に見てもいいと思います。大型力士なので不知火型は照ノ富士に似合う。これから徐々に慣れて、同じ不知火型でも照ノ富士独自の形が出来上がるでしょう。白鵬不在で一人横綱のプレッシャーがかかる中、100点満点の見応えのある立派な土俵入りでした。

取組では照ノ富士の生きざまを見たような気がします。大型力士の逸ノ城は、やりやすい相手です。実力差もあります。そんな相手に、横綱相撲を見せようと攻めが雑になってもおかしくないのに、照ノ富士は当たって左を取って土俵際も頭を下げるしぐさを見せました。大きな相撲を取らずスキがない。てんぐにもなっていない、理詰めの相撲です。自分の横綱像を見てほしい-そんな気持ちを表すような相撲でした。横綱になっても、かっこつけて取らないのは、序二段まで落ちて苦労してはい上がってきたからでしょう。これは素晴らしいこと。新横綱として立派な船出を切りました。(日刊スポーツ評論家)