照ノ富士の横綱昇進や、白鵬(現間垣親方)の現役引退など、今年の大相撲は話題豊富な1年となった。新型コロナウイルス禍でさまざまな制限が敷かれる中で、土俵上では多くのドラマが生まれた。年6場所で幕内を務めた力士が対象の「第10回日刊スポーツ大相撲大賞」は、独自調べで発掘した好記録や珍記録を表彰する。第3回は速攻平均4・8秒の阿武咲(25=阿武松)の「省エネ賞」。

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信条の“速攻相撲”が、数値となってあらわれた。一番あたりの取組時間が最も短かった「省エネ賞」を、阿武咲が受賞。平均4・8秒で、2位の大栄翔に1秒以上の差をつけた。「確かに、速い相撲をずっと心がけていた。体が大きい方ではない(177センチ)ので、止まってしまうと相手の圧力を受けがち。流れを止めないようにした」と、納得の受賞だった。

15日間相撲を取る中で、一番一番の負担は少なければ少ないほどいい。「短いと体的にも、精神的にも負担が少ない。長くなるといろんなこと考えるし、警戒しないといけないことも増える。速い相撲を取ると自分のやることに集中できるので、変な話、押し相撲としては理想的な部分もあると思う」。

もちろん、稽古場では、さまざまな想定をする。部屋では唯一の関取。幕下力士を相手に、あえて長い相撲を取るなど工夫する。「1日平均で20番から30番。日によって差してみたりすることもあります」。一番あたりだけでなく、1勝あたりの取組時間でも最も短かった21年。引き出しも増やしながら、17年九州場所以来の三役復帰を目指している。【佐藤礼征】