照ノ富士の横綱昇進や、白鵬(現間垣親方)の現役引退など、今年の大相撲は話題豊富な1年となった。新型コロナウイルス禍でさまざまな制限が敷かれる中で、土俵上では多くのドラマが生まれた。年6場所で幕内を務めた力士が対象の「第10回日刊スポーツ大相撲大賞」は、独自調べで発掘した好記録や珍記録を表彰する。

    ◇    ◇    ◇

最も多くの投げ手で白星を積み上げた「最優秀投手賞」に、小結霧馬山(25=陸奥)が輝いた。今年の45勝のうち、3分の1にあたる15勝が投げ手での勝利。2位千代翔馬に1差つけて最多となった。

角界入り前は、母国モンゴルでモンゴル相撲に打ち込んでいた。モンゴル相撲は約8年、さらに柔道も約2年の経験があったという。投げ手のコツを聞くと「相手の動きをちゃんと見るぐらいで、後はその時の流れですね」とさらり。「モンゴル相撲で感覚はつかんでいましたね」と話すなど、角界入りする前には投げ手の極意が体に染み込んでいたようだ。

多彩な投げ手を披露していた。6手の投げ手も最多で、変幻自在の“軟派”でも鳴らした。しかし「実は投げ手はそんなに得意ではない。本当は少なくしていきたい」とポロリ。幕下時代に、投げを打った際に右膝を負傷したことがあるといい、それ以来投げには慎重になっているという。

今は「まわしを取って、自分の頭を相手につけて前に出る相撲が理想」と“本格派”を目指している。22年シーズンに向けて「もっと前に出る力を磨いて強くなりたい」と意気込んだ。【佐々木隆史】