東前頭筆頭の翔猿(30=追手風)が横綱照ノ富士を破り、初金星で初日を出した。

適度な距離を保ち横綱の焦りを誘うと、もろ差しで堂々と寄り切った。埼玉栄高-日大と名門を歩んできた小兵力士は、横綱挑戦3度目で結果を出した。かど番の大関御嶽海は先場所優勝の小結逸ノ城を下して2連勝。大関貴景勝と新関脇豊昇龍も初日を出した。

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肩で大きく息をしながらテレビのインタビューに応じた翔猿は「がむしゃらに取っていました。うれしかったです」と喜んだ。21年名古屋場所で白鵬に挑んで以来、横綱戦3度目で初金星。控えめながら口ぶりには充実感があふれた。

照ノ富士に頭からぶつかると、距離を取って突き、押し、いなしを交えて横綱の体勢を崩した。上体が起きたところを逃さず、もろ差しで寄り切った。組むと絶対の強さを誇る照ノ富士には、幕内で過去4戦全敗。対策の研究を重ね、今回は「つかまらないように、どんどん攻めていく」という戦略を練った。場所前にはぶつかり稽古を増やし、押しを磨いた。

3歳上の兄で十両の英乃海の影響で小学1年の時に相撲を始めた。埼玉栄高では同学年の平幕北勝富士らとしのぎを削った。押し相撲を武器に日大卒業後は追手風部屋に入門。17年名古屋場所での新十両昇進時に自身の相撲が「素早く逃げ回る猿のようで、干支(えと)も申(さる)年」のため翔猿にしこ名を変えた。2年前の秋場所は新入幕ながら千秋楽まで優勝争いを演じた。当時と比べ「自分でも力がついたと思っている」と成長を感じている。

西前頭6枚目の先場所は8勝4敗で、部屋に新型コロナウイルス感染者が出て休場。ただ他の休場者との兼ね合いで、一気に自己最高位の東前頭筆頭まで上がる番付運に恵まれた。白星を重ねれば新三役も見えてくる。「意識しながら一番、一番頑張ります」。余韻に浸ることなく、残り13日間に備えていく。【平山連】

◆翔猿正也(とびざる・まさや)本名・岩崎正也。1992年(平4)4月24日、東京・江戸川区生まれ。埼玉栄高-日大を経て、大学時代の2年先輩の遠藤を追って追手風部屋に入門。15年初場所で初土俵。17年名古屋場所で新十両、20年秋場所で新入幕。好きなアーティストは玉置浩二。得意は押し。174センチ、133キロ。