若隆景が考えた立ち合いをしました。低い体勢で何をしてくるか分からない宇良に対し、右肩から当たり右を差したのは正解です。土俵際まで押し込まれましたが、右を差せているので体勢は十分。様子を見ながら、ここというタイミングで前に出て、あとは宇良の引きについて行くだけでした。いろいろな相撲を取れるのは稽古場で勉強しているからでしょう。

苦手とされる序盤5日間を若隆景がどう乗り切るかに注目していました。もったいない相撲もありましたが、内容はいいし3勝2敗なら御の字でしょう。ここ1年は、ひと場所ごとに課題をクリアして1歩1歩、確実に前進している印象です。三役以下は実力が拮抗(きっこう)していて一気に抜け出すのは難しい状況ですが、大関昇進に向けて着実に階段を上っていると思います。

序盤を無難に滑りだしましたが、小さな体で全身を使って取る力士ですから、ここから疲れも出ます。大きな相手との対戦もあります。持ち味のおっつけは大切な武器ですが攻めあぐねることもあります。その時は、次の攻めでまわしを取ったり、懐に入って食い付きいい意味で一呼吸置いて“休む”ことも大事です。難しいことですが、そんなペース配分ができれば若隆景の持ち味が存分に発揮できると思います。(日刊スポーツ評論家)