役力士の意地と計算された取り口を、若元春の相撲に見ました。左を差せば、かなりの自信を持って取れる若元春が、あそこまで深く差しながら北青鵬に右の上手を引かれたことで、長い相撲になることは予想したでしょう。左膝を使いながらの切り返しとか攻め手はあったでしょうが、何せ相手は2メートルを超す北青鵬です。ここは無理な攻めは我慢しました。ガップリ胸を合わせながら、北青鵬の腰の高さを察知して、勝負を決めるのは右上手からの攻めか、うっちゃりという選択肢が頭にあったと思います。北青鵬が寄り立てるところで、最後は腰が高い相手を腹に乗せて見事なうっちゃり。何があっても左が入れば勝てるという自信と、激しい攻防の中でも計算できる冷静さで役力士の面目を保ちました。

今場所の若元春は、自分に気合を入れながら、落ち着いて自分を見失わない相撲で、横綱の次に内容のいい相撲を取っていると思います。今場所、逆転優勝でもすれば大関昇進もあるかもしれないし、2ケタ勝てば間違いなく来場所は大関とりです。右を引っ張り込んでばかりだと相手も慣れてしまうので、もう1つ2つの攻め手があれば、もっと強くなるでしょう。あとは、気迫をもっと前面に出していいかな、と思います。(日刊スポーツ評論家)

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