三役で2場所連続2桁勝利をあげた関脇若元春(29=荒汐)が27日、名古屋市内で力士会後に会見に応じた。大相撲名古屋場所(7月9日初日、名古屋・ドルフィンズアリーナ)で初の大関とりに挑む。

昨年初場所で新入幕を果たしてから今場所が幕内10場所目。安定感が際立つ。負け越したのは昨年名古屋場所(東前頭4枚目、6勝9敗)1度だけ。弟の若隆景を追いかけながら、いつの間にか「大関候補」の立場は逆転した。

春場所は東小結で11勝、新関脇の先場所も10勝をあげて技能賞を得た。初めての大関とりに挑むが、「(意識は)まったくですね。何年か前まで幕下をうろうろしていた。今の関脇にいることが夢のよう。上の地位を意識することはないし、意識しないという意識を変えないようにしている」と言った。

大関のイメージとして子どものころに見ていた魁皇(浅香山親方)、千代大海(九重親方)をあげた。「あの強い大関に並べるかと思ったらまだまだだと思う」。珍しく地位へのこだわりがない。「地位が1つ上がれば格が上がるかといえば、そうではない。地道に実力をつけて“格”を上げていきたい」と言った。

期待がかかる「初優勝」に対しても、距離感は変わらない。「客観的に見ればないことはないかなと思うが、そこに自分の意見を入れるとありえない。弟(若隆景)が優勝した時は夢のようだったし、(同世代の)阿炎が勝った時はいい酒が飲めるな、と。でも、自分がとなればまったく現実味がない」。

それだけ幕内で戦うレベルの高さを痛感する日々という。「消耗の仕方がまるで違う。毎場所、全力で走り抜けている感じ」。ひょうひょうと、そして淡々と。崩れることのないメンタルが注目の大関昇進レースを勝ち抜く大きな武器かもしれない。【実藤健一】