関脇若元春(29=荒汐)が、過去2勝4敗の小結琴ノ若に完勝で大関とりへ前進した。けんか四つの相手に左四つで組み勝ち、力強く寄り切った。

立ち合い、差し手争いが勝負だった。若元春は琴ノ若に右を差させないよう左脇をがっちり固めて踏み込んだ。土俵際まで押されるが、うまく左を差し込むと形勢逆転。一気に走って寄り切った。

「ちょっと押し込まれたけど、左が入ったんで。何とかねじ込んでやろうと思った」。琴ノ若には最近こそ連勝も、それまでは4連敗していた。差し負ければやられる。「戦の天才」と言われる戦国武将の吉川元春からしこ名を受けた若元春もたけた戦略家。狙い通りの流れで、6勝目(2敗)の白星をつかみ取った。

大関とりにはずみがつく快勝だが、喜びはしない。「土俵際が雑になってしまった。もっと腰を落ち着けていかないといけない。自分の形に持ち込めるといいが、そうならない時のもろさ、弱さが今場所は際立っている」と反省を並べた。

いよいよ勝負の後半戦に突入する。若元春は「新たな力」を身につけた。土俵入りで新しい化粧まわしに替えた。地元の福島後援会からで、デザインは母文子さんが手がけた。付け人の兄・若隆元によると、文子さんはかつて美術系の学校を出てデザイン関係の仕事に就いていたという。

若元春は「福島のフルーツの花をちりばめた郷土の化粧まわしは初めて。母がデザインしてくれた。一層頑張らないといけない」と感謝する。残り7日間もこの化粧まわしを通すという。大関昇進の目安3場所計33勝にあと6勝。故郷、そして母の愛の後押しを受けてゴールを目指す。

◆若元春港(わかもとはる・みなと) 本名・大波港。1993年(平5)10月5日、福島市生まれ。祖父は元小結若葉山、父は元幕下若信夫の相撲一家で育ち、3兄弟の次男(長男は幕下の若隆元、三男は元関脇で平幕の若隆景)。学法福島高から荒汐部屋へ入門し、11年九州場所で初土俵。19年春場所で新十両、22年初場所新入幕。23年初場所で新小結、同夏場所で新関脇。得意は左四つ、寄り。187センチ、147キロ。

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