西前頭11枚目の平戸海(23=境川)が、前頭一山本を単独トップから引きずり降ろす、自己新の7連勝を飾った。

終始攻め抜いて最後は寄り切り。ご当所九州は長崎・平戸市の出身で、初日から3連敗も、声援を力に盛り返して7勝3敗と勝ち越しに王手をかけた。優勝争いトップの一山本、熱海富士、琴ノ若、霧島の2敗勢4人とは1差。目指すのは元横綱千代の富士の取り口で、故人に少しでも近づこうと初優勝を狙う。

立ち合いにかけていた。平戸海は下から一山本の両腕をあてがい、突っ張りを封じた。そこから出足良く前に出続け、最後は右を差して寄り切る完勝。単独トップの相手に、何もさせない好調ぶりで7連勝を飾った。「立ち合いは考えた通り。腕を伸ばしてくるところを、しっかりと踏み込んでついて行こうと思っていた」。大混戦を演出した。

地元九州場所の気負いから、いきなり3連敗を喫した。「迷いがあった。立ち合いで相手が何かしてくるんじゃないかと」。結果、力ない立ち合いで主導権を許してばかりだった。すると師匠の境川親方(元小結両国)に見透かされて「立ち合いだけ集中しろ」と、ゲキを飛ばされた。迷いがなくなり「相手に引かれてもいい」と、持ち前の出足の鋭さがさえ渡ってきた。

連日、多くの声援に支えられるが、特にうれしいのは4人きょうだいの末っ子の声援だ。長男の自身とは15歳違いの小学2年の次男大和(やまと)くん。「8日目に来てくれて『けがしなければ負けても勝ってもいい』なんて言うんです」と、まるで息子のように目じりを下げる。地元九州場所ならではの力の源だ。

若い衆のころから7連勝はなく、各段優勝は1度もない。「優勝は意識していない」というが、付け人を務めた当時大関の兄弟子、豪栄道(現武隈親方)の優勝パレードの景色は脳裏に焼きついている。以来「前まわしを引く、千代の富士さんの相撲が理想」と、動画で研究を重ねている。趣味はつりで、これまで最大は「千葉県でつった3キロのハマチ」。幕内優勝という超大物をつりあげる時が来た。【高田文太】

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