予期しないタイミングで5度目の優勝に王手をかけた。会場入り後の午後、横綱大の里(25=二所ノ関)は、この日対戦予定だった大関琴桜の休場を知った。取組を行うはずだった時間よりも、4時間近くも前に13勝目が確定。結びの一番で豊昇龍が敗れれば、取組を行わずに優勝が決まる珍事となる状況だった。優勝決定ならNHKのテレビ中継でインタビューに応じる必要があり、締め込み姿のまま東の支度部屋の最も奥に座って待機。テレビ画面越しに、優勝持ち越しを確認すると、スッと立ち上がって風呂に向かった。
早々と不戦勝が決まっても、隙を見せなかった。勝ち名乗りを受けるまで、付け人らと話すこともなく、表情は引き締めたままだった。中1日で豊昇龍との決戦に臨むのは、体力の温存や回復の面では優位。一方で相撲勘、勝負勘の面では優位と言い切れない。風呂上がりに取材対応した大の里は、中1日で千秋楽に臨むことに「どうですかね。また明日、気持ちを整えて臨みたい」と、有利とも不利ともいえないとした。
この日は父知幸さん、母母朋子さんが、両国国技館に観戦に訪れた。取組を見せることこそできなかったが、この日の不戦勝で今年60勝目を挙げ、早々に年間最多勝を確定させた。後続の若隆景、霧島の両関脇とは16勝差。逆転を不可能にした。11月九州場所を待たずに決まるのは、21年の横綱照ノ富士以来となった。ただ、それ以上にほしいのは豊昇龍を破っての横綱初優勝。1つの不戦勝を除いて過去1勝6敗の天敵との大一番へ「しっかり自分のやるべきことをやって、集中していきたい」ときっぱり。本割でも決定戦にもつれても優勝まであと1勝。土俵で勝って、優勝を手にする決意だ。【高田文太】

