新型コロナウイルス感染拡大によってロサンゼルス(LA)やニューヨークなど大都市では3月中旬から映画館は閉鎖されたまま4カ月が過ぎ、未だに再開のめどは立っていません。

カリフォルニア州は先月半ばに一度は映画館の再開を認め、全米最大の映画館チェーンAMCは7月15日の再開を発表していましたが、下旬には再び感染が拡大したことを受けて映画館の閉鎖が命じられ、再開は白紙となってしまいました。

3月にはチャイニーズ・シアターも閉鎖された
3月にはチャイニーズ・シアターも閉鎖された

これに伴い、パンデミック後初の大作映画になると期待されていたクリストファー・ノーラン監督の新作「TENETテネット」も、17日の公開を延期せざるを得なくなり、ウォルト・ディズニーも24日に公開を延期していた「ムーラン」を無期限で延期することを発表。ついに、この夏は新作映画が1本も映画館で上映されないという異常事態になる可能性が高まってきました。

現時点でAMCとシネマーク・シアターズの大手2社は、8月中旬から下旬の再開を目指しており、同じく大手チェーンのリーガル・シネマズは7月31日を再開日に設定しています。感染者数が全米最多となったカリフォルニアの中でも感染拡大がもっとも深刻なLAでは、映画館の再開どころか再び外出自粛命令が出る可能性すらあるため、今月末はもとより8月中の再開もかなり厳しいと言わざるを得ないのが現状です。

そんな現状を見越して、映画スタジオは早々に秋から冬にかけて公開予定だった作品の延期を決める動きが出始めています。ディズニーは「ムーラン」だけでなく、来年以降公開予定の「スター・ウォーズ」シリーズの新作や、「アバター」の続編についてもすべて公開を1年延期すると発表。今夏から年末に公開が延期されていたトム・クルーズ主演の「トップガン」(86年)の続編「トップガン マーヴェリック」も12月23日から来年7月に再び延期されることが決まりました。また、パラマウント・ピクチャーズはほかにも大ヒットホラー「クワイエット・プレイスPART2」を9月から来年4月に移動させると発表しています。

他にもベネチオ・デル・トロ、ティモシー・シャラメら豪華キャストの競演で「グランド・ブタペスト・ホテル」などで知られるウェス・アンダーソン監督の新作「ザ・フレンチ・ディスパッチ」が10月の公開を断念し、新たな公開日は決まっていません。今月31日公開予定のラッセル・クロウ主演の「アンヒンジド」は、おそらく8月に公開が延期されるものとみられていますが、現時点で公開日に関する発表はないようです。

一方で、これから年末にかけてまだいくつかの作品は、予定通りの公開を目指しています。もっとも直近では8月28日に「X-MEN」シリーズのスピンオフ「ニュー・ミュータンツ」が公開予定であるほか、キアヌ・リーブスとアレックス・ウィンター共演のコメディ「ビルとテッド」シリーズ第3弾「ビル&テッド フェイス・ザ・ミュージック」と「キングスマン:ファースト・エージェント」も9月に公開を予定しています。

さらに「ワンダーウーマン1984」と「ナイル殺人事件」は10月、「ブラックウィドウ」と「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」は11月、「ウェスト・サイド・ストーリー」とトム・ハンクス主演の「ニュース・オブ・ザ・ワールド」、「星の王子ニューヨークへ行く」の続編などが12月公開に設定されています。

映画館が来月下旬までに再開できた場合は、これらの作品が順次スクリーンにかかることになると期待されますが、ハリウッドにとって1年でもっとも稼ぎ時である夏を逃した今、ホリデー映画シーズンに向けてどれだけ映画館から離れていた人々を惹きつける作品が公開できるかに、存続がかかっていると言ってもよいでしょう。しかし、このまま感染拡大が止まらずに秋から冬にかけて第2波が訪れた場合、映画館の再開どころではなくなる可能性も捨てきれず、ハリウッドはこれからが正念場となりそうです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)